月刊ショータ

元電通コピーライター。ずっと自称コラムニスト。著書『広告業界という無法地帯へ ダイジョーブか、みんな?』、『カウボーイ・サマー 8000エイカーの仕事場で』

column

「一瞬たりとも油断すべからず to Bandung」

インドネシアのジャカルタという街は、観光用にできているとは言い難い。あまり見るべきものはなく、街を歩けるような構造にもなっていない。巨大なショッピングモールばかりがあちこちに濫立していて、しかも中身は大体画一的。どこに行っても同じショップ…

「いちいち怒るべからず in Jakarta」

前号でジャカルタに滞在するにあたり、「この橋は渡るな」と忠告されて来たことを書いた。滞在ちょうど一ヶ月になるが、雨が降っていない限りは毎日橋を歩いて通勤している。今のところどうということもない。ちゃんと周りに注意してサングラスかけて早足で…

「この橋渡るべからず in Jakarta」

「ソーリー、ソーリー」 辻本清美ではない。タクシー運転手のおじさんは、空港を出てものの十分で渋滞にぶつかると申し訳なさそうに手を合わせてそう言った。 「いえ、いいんですよ。あなたのせいじゃないし」 インドネシアのジャカルタの交通事情は事前に噂…

「自分でしたいの」

二人でとんカツを食べているとして、よもやおっさん同士が「いやいやいや」とか言い合って、お互いのカツにソースをかけ合ったりはしないものだ。でもお酒はそうではないらしく、ビール瓶を取り合うおっさんと、会計の際に「今日はワタシが」「いや、ワタシ…

腰がこうとか脚がどうとか

僕は、野球というものにほとんど注意を向けずに少年時代を過ごした。当時は『キャプテン翼』の時代だったので、サッカーこそが新しく、自由で、カッコいいスポーツの代表であって、野球は「古い」「厳しい」そして「ダサい」ものであるという印象があった。…

「ピックアップマンには何かがある」

初めて訪れたバンコク。現地の仕事仲間にもらったガイドブックには「アーバンジャングル」という表現があったが、まさに都市のジャングルと言っていい混沌と猥雑さに圧倒される。街を歩いてみると、一見廃墟のようなビルのひとつひとつに人の営みがあり、野…

「※見た目上の演出です。」

数年ぶりに少し年上の友人に再会したところ、頭髪が薄くなっていた。会話の中でそこに触れていいものか迷っていると、僕の視線に気付いたのか、彼の方から切り出した。 「アタマ、禿げたでしょ」 「え、ええ」 ちょっと、どう反応していいのか困るよね……。 …

「(4+9)×2の旅 後篇」

九州自動車道という高速道路に入り、鹿児島に向かってぶっ飛ばす。山道と格闘した後は高速道路のありがたみが身に沁みてわかる。周りには車も少なく、日差しに南国の峻烈さが窺えるようになってきた。 サービスエリアで話しかけられたトラックの運転手さんが…

「(4+9)×2の旅 中篇」

愛媛県の八幡浜港を出たフェリーは、約二時間をかけて大分県臼杵港に着く。乗客は潮風を避けて客室内で思い思いに時間を過ごしている。車庫を地下とすると、船は三階建てで、僕は二階の甲板のベンチで本を読んでいた。しかし、寒くなってきたので後半は室内…

「(4+9)×2の旅 前篇」

二十七才でモーターサイクルに乗り始めて十年目になる。カワサキのバルカンドリフターであちこち旅をしてきたけれど、二〇一〇年に相棒の大谷さん(仮名)と四国をぐるっと旅してフェリーで大阪港に帰った際に、「四国と九州もフェリーでつながっている」と…

「そらぁ、ええもんつくりまっせ」

前回に引き続き、おっさんのことについて書こうと思う。ひと月にも渡って考えるなら、若い女性と、そない若くない女性のことだけを考えていたいものだが、自分の将来(もしかしたらごく近い将来)について考えるつもりで、あえておっさんについて思考を巡ら…

「おっさん的傾向と対策」

週が明けると年度が変わり、僕は入社十二年目になる。 昨夜は会社の野球チームでシーズン開幕前の飲み会をしていたのだが、知らない間に自分が若手ではなくなってしまったことに気付かされた。僕よりも先輩の四〇代の方々とテーブルについて、皿やビールなん…

「明日を信じて」

他の国のことはよく知らないから想像で書くのだが、日本には女性専門の独特な職業がある。「いるだけ」が仕事の職業だ。無礼を承知で言うが、たとえばクラブとかキャバクラのおねえさん、そしていわゆるグラビアアイドルと呼ばれる人たちがそれにあたる。 週…

「衝突を避ける。徹底的に(本論)」

今からちょうど二年前の二〇一〇年一月号のコラムで、僕はこう書いた。 「せめてこの国が、歴史の嵐の末に手元に得た憲法九条を堅持しながらも、毅然と生きていくことを望む」 僕はたまに愛国的な発言をするから、傾向的に言うと、こういうタイプの人間は憲…

「衝突を避ける。徹底的に(序章)」

年末になって、忘年会やら懇親会やらが何回かあり、いわゆるバフェ(バイキング)で食事することになった。 すると、必ず、大抵女性に「みんなのために、適当に何種類か料理を皿に持って、テーブルの真ん中に置いてくれる人」がいる。 それはちょいとありが…

「まだ怒ってるのか、お前は」

若い頃は、男を「条件」で選ぶ女性が大嫌いで、よく腹立たしく思っていた。 「医者としか結婚したくない」とか、「電通マンとコンパしたい」とか(マンとコが近過ぎてドキッとするね)、ふざけんなと。あなたの周りにもいる(いた)でしょう、そういうヤツが…

「アイ・ワズ・ア・カウボーイ」

この、理由のなき自然への憧憬はなんなのだろう、と時折思う。 僕は山とか草原とか湖を見るのがやたらと好きなのだ。だから、トレッキングしたり、モーターサイクルという鉄馬に乗ったりするのだ。加えて、僕が十代の頃より飽きもせずに聴き続けているカント…

「インディーズの矜持とロックの魂」

僕は自慢ではないが友達が少ない。同級生の仲間は東京にいるが、十年以上も住んでいる関西には本当に数えられるくらいだ。何百人もいる会社の中に、神市(仮名)という後輩が一人。あとは仕事関係の友人と一部重なりながら、トレッキング系で幾人か。そして…

「どうせオレは忘れちまうんだ(アスホール篇)」

朝九時四十二分バンクーバー着予定だった列車は、八時五〇分頃に駅に入った。こんなにアバウトなら「四十二分」とか予告しなければいいのに。 午後に小型飛行機でバンクーバー島のビクトリアという街へ向かうが、それまでの時間潰しにダウンタウンまで重い荷…

「どうせオレは忘れちまうんだ(テント篇)」

マウントロブソンが目の前に見えてきた。それでも目的地のキャンプ場まではまだ三キロほどある。つまりあと一時間ほどは歩かなくてはいけない。 辿り着かないのではないかという不安はもうないが、力の限界が近いこともわかっている。トレイルは河原まで下り…

「どうせオレは忘れちまうんだ(トレイル篇)」

ジャスパーに着いた翌日。ホテルの部屋で、夜中の三時半に目が覚めてしまった。 七時に階下のレストランが開店するまで、装備の点検でソワソワ。 これから一泊のトレッキングを敢行するため、北米らしい卵やベーコンのブレックファストで、せめてカロリーを…

「どうせオレは忘れちまうんだ(鉄道篇)」

シアトルでバンクーバー行きのホライゾンエアーに乗り換えるため、空港にてしばらく待機。 「シアトルといえばスタバでしょう」ということでスタバに入る。 「そのベーグルください。スライスしてトーストしてもらえますか? え? できない。両方ダメ。プラ…

「どうせオレは忘れちまうんだ(準備篇)」

男には冒険が必要である。時折。 見ず知らずの外国を一人で歩いて見たこともないものを見て、何事かを感じて帰ってくる義務がある。僕はそう考えている。 しかし、僕が海外一人旅をしたのはもう七年前のことになる。その時の模様は月刊ショータ〇四年七月号…

「僕のすべてを懸けて」

浜田省吾のことについて書こうか、グラビアアイドルについて書こうかと、ハマショー聴きながら散々考えていたら、想いが溢れそうになってきたので、ここはハマショーにします。すみません。聴きながら考える時点でフェアじゃないと思うんだけど。 本当は、ハ…

「勝手なことすんなよなー」

まずはこの画像をご覧ください(クリックで拡大)。 英語を解する人なら、こうなるはずである。 「あー倖田來未って亡くなったんだー。最近地震のニュースしか見てなかったからなぁ……って、死んでへんわっ」 という大阪名物ノリツッコミを一人ですることにな…

「願うが、きっとそうはならない」

東日本大震災が起こって以来、ありとあらゆることがあらゆる人 によって論じられているから、なんの専門家でもない僕がコメントするべきことは見つからないのだけど、思ったことをひとつふたつ 書くことにしよう。 地震が起きた数日後に石原慎太郎東京都知事…

「アメリカのなんやねん(後篇)」

関西以外にお住まいの方はご存知ないかもしれないけど、よしもとにプラン9というお笑いグループがありまして、その中でも地味なキャラであるヤナギブソンという人がいる。妻との馴れ初めなんかを滔々と語り、途中で気付いて「誰が興味あんねん!」と自分で…

「アメリカのなんやねん(前篇)」

日曜日。僕は朝からホットドッグとベイグルを食べて、午後からモーターサイクルに跨がり、クリント・イーストウッドの映画を観に行き、帰りにウェイトトレーニングをして、夜帰ってきた。 あとは、午前中に教会に行って、庭の芝生を刈れば、ほぼ完全なアメリ…

「権威の正しい使い方」

僕が高校生の頃はインターネットなんかなかったし、自転車通学で電車も乗らなかったし、当然新聞も読まなかったから、本を買う時は常に書店での「ジャケ買い」だった。 その後、本には賞というものがあるのを知って、ナントカ賞受賞と書いてあるものを優先的…

「私から言えることはひとつだけです」

世の中には知らない方がいいこと、知りたいけど知らない方がいいのがわかっていることというのは多い。 ベランダでふとんをバタバタしている人がいるが、そこで払われた埃はどこへ飛んで行って、どれくらい人に吸い込まれているのか。 清潔でいえば、このト…