月刊ショータ

元電通コピーライター。ずっと自称コラムニスト。著書『広告業界という無法地帯へ ダイジョーブか、みんな?』、『カウボーイ・サマー 8000エイカーの仕事場で』

2016-01-01から1年間の記事一覧

「電通はなくならない。自由がまたひとつ、なくなる」

去る十二月二十三日に、電通が二〇一六年の「ブラック企業大賞」に選ばれ、二十六日には厚生労働省の長時間労働削減推進本部(本部長・塩崎恭久厚労省)が、過労死ゼロを目指す緊急対策を公表した。 ・企業に対し、実働時間と自己申告時間の乖離がないよう実…

「不寛容という見えない敵に」

しんどい一ヶ月であった。 先月書いたコラム『広告業界という無法地帯へ』への反響として、メディア各社から取材が押し寄せた。新聞社二社、テレビ局四社、雑誌社二社、インターネット系二社など。ラジオ番組でも僕の知らないところで紹介されていたようだ。…

「広告業界という無法地帯へ」

電通の新入社員が自殺して、超過勤務による労災が認定されたという出来事が、メディアで連日取り上げられている。若くして人生を諦めてしまった女性社員の無念と、ご家族の心痛と、友人や同僚たちの動揺を思うと、僕の心も穏やかではいられない。 僕は二〇〇…

「アメリカはどこにあるんだ」

誰しも、使命感を持って続けていることがあるのではないだろうか。子供を育てることもそうだし、仕事にそれを感じて取り組んでいる人もいるだろうし、地域や業界や趣味で、何かの団体に所属することもそれに通じるものがあるだろう。 僕にとってそれはカント…

「ウヨクに言いたい。サヨクに訊きたい」

「テレビが報じない!」、「言論封殺だ!」と嘆きながら、ネットで思い切り自由に発言している意見がよく聞こえてくる。 「いい時代のいい国に生まれたじゃないか、キミたち」と、僕は思って眺めている。 現代のテレビ放送のメジャー局がどういう人々に向け…

「ウトゥクシクモナイシ、カワイクモナイクセニ」

サラリーマンの仕事をドライヴするものは「怒られたくない」という動機であると喝破したのは、元博報堂のネットニュース編集者、中川淳一郎さんである。 広告業界のしょーもないエピソードが著書である『夢、死ね』(星海社新書 二〇一四年)に書かれていて…

「ウトゥクシク、ナリタイナ」

ある晩、もう二十三時くらいのことだ。 後輩のアートディレクター(以下、AD)が喫煙室に入ってくるなり、イライラした様子で煙草に火を点けて、大きなため息をひとつ吐いた。 「どうした?」 先輩の僕は一応声をかける。 「もうムチャクチャっすよ。ポス…

畳と茣蓙と科学的屁理屈

(前回からの続き)ようやく婚約を果たしたユウちゃんの話を聞きながら、浮かない表情の二人がいた。共に独身のアキちゃん(仮名)と滝下(仮名)である。 「どうしたら、そういうことになれるのでしょう……」 人間関係という深遠なものに対する完全な対処法…

「スタンプカードが一杯になったようなのだ」

コラムに二度登場いただいているユウちゃん(仮名)である。 初めに書いたのは、二〇一四年五月号「ルールブック、読んだか?」の中だった。その続報として、翌年六月にまた書いた。 私は、彼女のいじらしくて切ない恋の行方を静かに見守っていた。 二十九才…

Santa Monica, California

「カウボーイハットの内側に」

■「ハーブという男」篇 十五年近く勤めた広告会社を辞めて、ひと夏の間、カナダにてカウボーイをして過ごすことにした。今はもうすでに帰国して、三ヶ月が経ったところだ。 僕がお世話になったキング牧場は、ハーブという六六才(当時)の男と、その息子のケ…