日本企業の経営者は、長らく実にバカなことをつづけてきた。
自社製品の価格を上げずに、品質を落としたり量を減らしたりしてきたのである。
明治乳業なんて過去に「おいしい牛乳」を1Lから900mlに減量するにあたり、「持ちやすくなった」「筋肉への負担を軽減した」と言ってのけたのだ。
明治乳業が「おいしい牛乳」を1ℓから900mlに減らしたときの言い訳が「筋肉への負担が減ります」だったことを、僕はまだ許していない。スーパー行くたびに腹が立つ…
— マエダショータ (@monthly_shota) 2020年8月31日
内容量を減らしたことで、なにが起きたか想像すると、
・売上が上がる要素はない
・酪農家への支払いは減る
・販売量が横ばいだとしたら自社の利益のみ上がる
ということになる。
これ、恥ずかしくないのだろうか。
そのほか、お菓子も袋の中の数が減ったり、個体が小さくなったりしていった。
こんなことを何十年もつづけて、日本を貧しくしていったという自覚は大手各社の経営陣にあるのだろうか。
マスメディアも同様にバカで、「牛丼が〇十円値上がりする」みたいなどうでもいいニュースに「街の声」を拾ってきては、「大打撃です」「もう牛丼を食べられません」みたいな愚にもつかない報道をしてきた。本気でそう思っているのだろうか。
じゃあ、スマホゲームの「課金」額がどれだけ伸びてきたのか調べてみるといい。
そんな何十年を経て、いま、パンデミック後の世界のインフレと原料高と円安を受けて、一斉に値上げ値上げである。
いままでとなりのひとの顔色を窺って、恥ずかしげもなく姑息(その場しのぎという意味)な手段をとってきたのに、まわりがはじめたらみんな揃って値上げラッシュだ。
これは、カッコは悪いが、悪いことではない。ようやく正常になりつつあると言える。
私が言いたいのは、経営者の仕事というのは「自社製品を高く売る/多く売る」ことではないのか、ということだ。私はたいした経営者ではないどころか、だいぶボンクラなので、あんまり大きなことは言えないが、そう考えている。
しかも、「高く売る」だけではなく「それでさらに喜んでもらう」というむつかしい仕事なのだ。
「いいものを安く」を善とする企業も多いが、つまるところそれは下請けを叩きに叩くから成立する商売である。「企業努力」という言葉の意味が、本来の効率化に留まればよいのだが、結局は働くひとの給料を削って、納入元の会社にムリを強いて、払うべきを払わないことの方便として使われてきた。
牛乳みたいな他社と差が出にくい商品はどうすればいいのか知らないし、アイデアは有料なのでここで知恵を絞ったりはしないが、過去にはアメリカで「Got Milk?」キャンペーンがあり、我が国では「牛乳に相談だ」という広告施策があった。
企業単体でもアイデア次第で、なにか手はあるはずなのである。そこを考えるのが経営者の仕事であり、おもしろいひとたちに考えてもらうために電通みたいな会社があるわけだ。
「量を減らして我が社だけこっそり得をしよう」なんて、誰でも思いつく卑しい手法であって、ほかの誰も得しない、愚策中の愚策ではないか。
つまり、経営者が仕事をしていなかったのだ。勇気がないから、安直に逃げてきたのだ。
さて、そういう時代は過去のものになったので、値上げのつづく世の中を我々庶民はどう生きていくべきなのか。
「ふつうの生活をつづける」が正解なのではないか。
ふつうの定義はひとそれぞれだから、「1円でも安いものを探しまくる」ひともいるだろうし、「多少高くても好きなもの、いいモノを買いたい」というひとも、「ほかのひとが買えない、一番高いやつがほしい」という見栄っ張りなお金持ちもいるだろう。
それぞれに身の丈というものがある。
私のふつうは、応援したい会社や店にカネを払い、誰ともわからないアマゾンや楽天での買い物は必要最小限に抑え、賞味期限が近いから20%引きのヨーグルトとかを買い、好きな店で酒を飲んで、交通手段はケチるけど書物はケチらず、たまには劇場で映画を観て、必要ではないけどなんかおもしろいから買ってみたり行ってみたりというムダ使いをする、である。
当然、牛丼が何十円上がっても食べる。知ったことか。
これから下がることはまずないのだから、ほとんどの品やサービスがいま最安値であると考えてよい。
政府はこれでも(あの体たらくの岸田政権でも、という含意)、賃上げプレッシャーを各所に対してかけてくれている。
ふつうの生活をつづけていれば、ふつうに給料は上がっていくはずなのだ。もちろん個人差や業界差はあるけど、そうやって経済社会は発展していくものなのだから。
投資に詳しいひとなら賛同してくれるかもしれないが、まずはじめに差し出さないと、あとで受け取れることはないのだ。いまは、差し出すフェイズなのだと、ちょっと苦いが嚥下するしかない。受け取れるかどうかは(投資なんだから)なんの保証もないが、差し出さないと受け取れることはない。
そんなことを言いつつ、いま私の会社は決算期で、自分の役員報酬を上げるべきかどうか、ものすごい悩んでいる。つらいぞ。きついぞ。大丈夫だろうか。世の零細企業の社長の苦しみはわかっているつもりだ。
最後に、自分に言い聞かせるつもりで、寅ちゃんの言葉を……。
「寅ちゃんはなに考えてるの?」
— マエダショータ (@monthly_shota) 2021年2月18日
「バカなのは仕方ない。ビンボーなのはお互いさまだ。しかし、卑怯なのはたとえヤザワが許しても、俺は軽蔑する、ということだ」
「ヤザワの使い方が逆なような気がするけど、まぁいいか」 pic.twitter.com/hMz7FfOLKn
貧乏なのは仕方ないし、生きてりゃそういう一時期もあってよいと思うのだが、「貧乏くさい」のはダメだな。ずっとダメだな
— マエダショータ (@monthly_shota) 2020年2月5日
みなさん、ひきつづきがんばっていこう。