月刊ショータ

元電通コピーライター。ずっと自称コラムニスト。著書『広告業界という無法地帯へ ダイジョーブか、みんな?』、『カウボーイ・サマー 8000エイカーの仕事場で』

「20年書いた」

実は、この「月刊ショータ」は20周年なのである。
書いている本人が、2023年も三分の一が過ぎてから気がついた。

2003年の1月に書きはじめたようだ。今回は20周年特別号として、この20年を振り返ってみよう。
これは自分のために振り返るだけなので、読んだひとになんら意味をもたらすものではないので悪しからず。

そもそも月刊ショータを書きはじめたのは、当時私は東京で生まれ育ってアメリカで大学を出たのに、会社に入ったら関西支社に配属されて、友達もいないし、ヒマだったのである。
さみしいから東京の同級生らにメールを書いて、「こちらで元気にしている」ことを伝えたかったのだ。それで、こんなことがあったとか、こんなことを思った、と一方的に送りつけていたのである。

そうしたら、彼らが「おもしろいから毎月送ってこい」と言う。
だから、「月刊ショータ」という名前なのだ。

私は実際に毎月送った。その頃はメール本文にしてはかなり長いものを送りつけていた。
そのうち会社の同僚や社外の友人にも、「読みたい」という人たちが現れて、メーリングリストは100人を越えた。
2010年くらいに、仕事を通じて知り合ったウェブ会社の社長さんが「ウェブサイトつくったるわ」と言ってくださり、ウェブで公開するようになった。

それは、今はもう閉鎖したけど、私のオリジナルのウェブサイトで、読んでる人(PV)もたぶん500人くらいだったのではないか。その後、ブログサービスに書いたほうがいいんじゃないの? ということになって、(当時noteは開始したばかりで、なんとなくイキってる感じがしてスルーした)、はてなブログに書くようになった(ちなみに、いまも大した人数の方が読んでるわけではないので、気楽なものだ)。

このはてなブログには20年分すべてを載せているが、初期のころのコラムが読みにくいことになっているのは、オリジナルサイトのテキストデータをはてなに移行したのだけど、改行とか一行空けが反映されなかったのと、画像を移行できなかったことが理由だ。
厳密にはできるみたいなのだけど、私はそういうのが苦手なのでやり方がわからないし、画像データももう手元にはない。紙焼きの写真を(会社の機器を使ってw)スキャンしていたから、写真を探してもう一度やればあるのだが、それはさすがに面倒くさくてムリ。

この20年で私も変わった。
書きはじめたころは電通の独身寮で、週末の一日をつぶして部屋にこもって書いていた。
まだ労務管理もいい加減な時代だったので、わざわざ日曜日に会社に行って書いていたこともある。
カノジョがいたころも「その日は月ショーを書くから」などと言って予定を開けていたはずだ。「なんだこの男は」と思われていたかもしれない。だからフラれたのだろう。

そこまでして書いても、ここが私の最も愚かなところなのだが、「ブログをカネにする術」を知らなかった。まったく知らなかった。

広告会社にいたくせに、広告を貼るとか、アフィリエイトとかぜんぜん知識がなかったのである。だから、2017年までは月刊ショータで一銭ももらったことがない。アホである。

2016年に書いた「広告業界という無法地帯へ」というコラムが反響を呼んで、翌年に書籍になり、印税としていくらかもらったのがはじめて手にしたお金である。

そのうちnoteという画期的なサービスが勃興して、いまは有料記事や投げ銭サポートもふつうになりつつあり、やはり世の中はちょっとずつよくなるものだ。

なのに、オレはいまでもはてなブログに書いている。アホである。
去年やっと友人のタイラーさんにcodocというアプリケーションを導入してもらって、投げ銭を受け取れるようになった。たまにサポートいただくことがあって、感謝しております。

なんでカネにもならんコラムを20年も書いているかというと、はじめのころは「文字でいかにひとを笑わせられるか」という挑戦だった。
書きはじめたのが27才で、現在私は47才である。恐ろしかろう。

いま、昔のコラムを読んでおもしろいかと訊かれれば、そんなことはどうでもいいくらい恥ずかしいわ!

……でも、たまにいまでもおもしろいのあるよ、うん。

やがて、私もおっさんになってなんだかマジメな話も書くようになった。笑えるだけが「おもしろい」ではないと学習したのだろう。

私は訊かれてもいないのにひとにモノを教えるのが嫌いなので、文章術みたいなことには口を慎んできた。それほどのモノを書いていないし、私は大作家ではない。

ただ、20年も書いて、本も何冊か出していれば、いろんなことがわかる。だから、今日に限っては、ちょっと特別サービスしよう。

まずは……、
と思ったけど、やっぱりやめます。というか、ないわ。
特になにも書けることがなかった。

この20年を振り返ってみても、思い浮かんだのは、ワタシのカラダを通り過ぎていった数々の女たちくらいだわ……。

文章術を知りたいひとは、私の先輩である田中泰延さんの『読みたいことを、書けばいい。』ダイヤモンド社)を読めばいい、と思う。ホントに。

この本の中に「文字がここへ連れてきた」というくだりがある。
ちょっと長くなるが引用する。

〈好きではじめたことなのに、長い文章を書くのはほんとに苦しい。腰は痛いし、とにかく眠い。途中で必ず「なぜこんなことをしているのかわからない」という気持ちが湧き上がる。自分が読んで喜ぶのは勝手だが、おれがなにを書いても読むやつなどだれもいないだろう。

だが、しかし、それを何度も積み重ねていくうちに、わたしは思いもしなかった場所に立つことになる。書いたものを読んだだれかが、予想もしなかったどこかへ、わたしを呼び寄せてくれるようになったのだ〉

まったくその通りだ。

見知らぬあなたがこれを読んでくれているのも、そういえばあいつと友達になったのも、あの人が私に会いに来てくれたのも、私が20年書いていたからなのだと思う。