月刊ショータ

元電通コピーライター。ずっと自称コラムニスト。著書『広告業界という無法地帯へ ダイジョーブか、みんな?』、『カウボーイ・サマー 8000エイカーの仕事場で』

「7回の夏の昔、なにをしていただろう」

久しぶりに音楽アルバムを買った。
買ったと言っても、モノとしてのCDではなくてダウンロードなんだけど、以来ずっと聴いている。

モーガン・ウォレンという若いカントリー歌手で、僕はまず彼の”Whiskey Glasses”という曲で注目していて、不適な面構えも、ガサガサした声質も好きだった。

https://youtu.be/nmI3gA-PQKs

 アメリカではここ何十年も変わらない「田舎モノ・スタイル」である、マレットヘアにカットオフ・シャツ。
マレットとは、「横は短いのに、襟足を長く伸ばすヘアスタイル」のことである。80年代に流行ったのだろうか、すでに90年代には「ダサい」とされていたように思うが、今でも燦然とダサい。
イメージが浮かばない人は”mullet”で画像検索してみてほしい。

カットオフ・シャツとは、「袖を切り落としたシャツ」のこと。あれだ、スギちゃんである。

これらは「レッドネック」とか「ホワイト・トラッシュ」と揶揄されるような、アメリカの白人労働者層を象徴するスタイルなのである。

モーガン・ワレン自身は、1993年にイーステネシーの牧師の家に生まれ、ピアノとバイオリンを習い、野球選手としての奨学金で大学へ進学しているから、わりとええトコの子なのかもしれないと想像する。

しかし、ロン毛で出場したオーディション番組”The Voice”で注目されるや、南部の田舎モノ丸出し戦略で、音楽業界に殴り込みをかけてくるとは痛快ではないか。

殴り込みといえば、彼は2020年の5月にバーで酔っぱらって暴れて逮捕されてもいる。 

f:id:ShotaMaeda:20210228185556j:plain

購入したのは彼のセカンドアルバム『Dangerous』なのだが、中でも特に”7 Summers”という曲は素晴らしい。
僕には音楽的なことはなにひとつわからないので、どういうメロディーラインで、どういうアレンジだと、こんなにノスタルジックで切ない歌が出来上がるのか、解説できる人がいたら教えてほしいくらいだ。

できた当初はアルバムに含めるつもりはなかったそうなのだが、TikTokにサビを歌って公開してみたところ、すごい反響を得て考えを改めたという。

www.tiktok.com


コロナ社会ももう、一年になる。

先のことは考えても仕方ないから、最近よく昔のことを思い出す。

7年前の夏はなにをしていただろうか。
今は2021年だから、2014年の夏。僕にとっては電通での最後の夏(まだ辞めることは決心していなかったけど)で、重たいプロジェクトに関わり、とにかく心身を削って働いていたように思う。

その次の夏は、カナダの牧場で「カウボーイ・サマー」だ。

それからいろんな人に出会って、なんとか元気にやっているけど、それにしてもコロナめ。
先を見ても虚しくなるし、うしろを振り返っても切なくなるぜ。やれやれ……。

 

“7 Summers” by Morgan Wallen

Yeah, you used to talk about
Getting even further South
Somewhere where the summer lasted all year 'round
Probably got a big ol' diamond on your hand right now
Maybe a baby or a couple by now
Long driveway to a big white house

そうそう きみはもっと南に移り住むことを話してたね
夏が一年中つづくどこかに
たぶん今ではデカいダイヤモンドの指輪をしてさ
子供のひとりかふたりもいてさ
長いドライブウェイがある 大きくて白い邸宅に住んでるかもね

 But I wonder when you're drinking if you
Find yourself thinking about
That boy from East Tennessee
And I know we both knew better
But we still said forever
And that was seven summers
Of Coke and Southern Comfort
Were we dumb or just younger, who knows?
Back then, you used to love the river
And sippin' on a sixer with me
Does it ever make you sad to know
That was seven summers ago?

でも僕は思いを巡らす
きみが飲んでるときなんかにふと
あのイーステネシーの男について想うことがあるのかなと
僕にはわかってる
僕らふたりが そんなことはありえないって知っていたのに
それなのに 永遠だなんて言ったこと
コーラとサザンカンフォートを飲んだ7回の夏
僕らは愚かだったのか 単に若かったのか
誰にわかるというんだ

あの頃きみはあの川と そこで僕と6缶パックのビールを飲むのが好きだった
あれからもう7回の夏が過ぎただなんて
哀しく思うことはないのかい?

 

Yeah, I bet your daddy's so proud
Of how his little girl turned out
Think she dodged a bullet
Of a good old boy like me
'Cause I still
Go drinkin', same friends on Friday
Bought a few acres, couple roads off the highway
Guess you never saw things my way anyway

そうだな きみのお父さんは誇りに思っているはず
小さかった彼の娘がどんなふうに育ったかを
そして彼女が僕みたいなダサい男と よくぞ別れたと思っているだろう

だって僕は今でも同じ仲間たちと金曜日に飲みに行くし
ハイウェイから道何本か奥に小さな畑を買ったし
きみと考え方はぜんぜんちがったよね どのみち

But I wonder when you're drinking if you
Find yourself thinking about
That boy from East Tennessee
And I know we both knew better
But we still said forever
And that was seven summers
Of Coke and Southern Comfort
Were we dumb or just younger, who knows?
Back then, you used to love the river
And sippin' on a sixer with me
Does it ever make you sad to know
That was seven summers ago?

Seven summers ago
Seven summers ago

それでも僕は思いを巡らす
きみが飲んでるときなんかにふと
あのイーステネシーの男について想うことがあるのかなと
僕にはわかってる
僕らふたりが そんなことはありえないって知っていたのに
それなのに 永遠だなんて言ったこと
コーラとサザンカンフォートを飲んだ7回の夏
僕らは愚かだったのか 単に若かったのか
誰にわかるというんだ

あの頃きみはあの川と そこで僕と6缶パックのビールを飲むのが好きだった
あれからもう7回の夏が過ぎただなんて
哀しく思うことはないのかい?

7回の夏の昔
7回の夏の昔さ

 

(対訳:前田将多)

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