月刊ショータ

元電通コピーライター。ずっと自称コラムニスト。著書『広告業界という無法地帯へ ダイジョーブか、みんな?』、『カウボーイ・サマー 8000エイカーの仕事場で』

「誰もしたくない隣国のハナシ」

その方は、共同通信社から社費留学でフランスの大学に在籍して語学を身につけ、その後パリ支局長を務めて、新聞社に移籍。記者活動を通じて、日本のピューリッツァー賞ともいえるボーン・上田記念国際記者賞を受賞し、パリ在住二十年以上の実績を評価されて日本記者クラブ賞、菊池寛賞も受賞。フランスに関する多くの著作があり、現在でも現地に住み旺盛な言論活動をしている。

そういうジャーナリストが、テレビで「フランス人の交渉術」として、
「強い言葉で相手を威圧する」
「周囲にアピールして理解者を増やす」
「論点ずらして優位につく」
と論じた。……と仮定しよう。

これは、「差別的だ!」「ヘイトだ!」と、日本国内で問題になるだろうか。

なるまい。

お気づきのように、これはフランスを韓国に置き替えたら、まるっきり一月二十四日にフジテレビ『プライムニュースイブニング』で放送された、産経新聞黒田勝弘論説委員にまつわる一件のことである。

headlines.yahoo.co.jp

ためしに、「フランス人 交渉術」で調べれば、「とことん話し合う、交渉する、主張する(中略)、めんどくさい人達」、「自分たちが世界の中心だと考えている」と書いてある。

アメリカ人なら「『朝令暮改』がアメリカ人のスタイル」、ロシア人なら「多少のルールは破ってもいいと考えている」、「恐ろしく疑い深い」など、それぞれに不名誉なステレオタイプが記載されている。ふむ……。

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しかも、韓国人について言えば、上記の三つの指摘は過去の事案でもって例示できる。
「強い言葉で相手を威圧」したナッツ姫というのがいたし、朴槿恵前大統領は「加害者と被害者の立場は千年たっても変わらない」と宣したし、「周囲にアピール」して慰安婦像を世界のあちこちに建てたし、「論点をずら」すことにより、韓国人サッカー選手が日本人に向かって猿のマネをしたことが、なぜか旭日旗を日本の朝鮮支配の象徴であると断じるという、よくわからない方向に飛躍したことがあった。

ここ最近、立てつづけに外交問題が勃発している:
韓国が、主宰する国際観艦式で、日本の自衛隊護衛艦旭日旗を掲げるのをやめさせるために、「自国旗と韓国旗のみ掲揚するよう」各国に通達し、自衛隊は参加を取りやめ、参加国はどこも従わなかった。

いわゆる元徴用工訴訟で、韓国の大法院(最高裁)が、一九六五年に結ばれた日韓基本条約を無視して日本企業に賠償判決。

自衛隊のP-1機への韓国軍によるレーダー照射問題。
それにつづく、自衛隊機が威嚇飛行したとの主張、
など、次から次に問題が起きるのだが、その都度、なぜか日本人の中に韓国を一方的に擁護する人たちがわらわらと現れ、日本人が韓国の所業を批判すると「ネトウヨ!」「ヘイト!」などと糾弾される。

法と事実に照らし合わせば、今のところ日本が間違っているとは、僕には思えないのだが、それを公に言うことは憚られる雰囲気がこの国にはある。それによって、感情のコントロール能力がアレな人たちは、匿名で、口汚く、執拗に韓国および朝鮮人を罵ることになり、いわゆるネトウヨができ上がる。そして、彼らと一緒クタにされるのが怖いから、正当な言い分であっても人は口をつぐむ。

韓国を批判する際には、必ず「私には韓国人の友人もいるが」と予め断ってから述べる必要があるし、酒場で話すにしても「この中に在日朝鮮人の人がいたらゴメンやけど」とはじめに謝っておくことになる。アメリカ人の血が入っている人だってふつうにいるかもしれないし、配偶者がドイツ人の人もいるだろうに、韓国・北朝鮮にだけはやたらと気を使う。

フランスよりもずっとめんどくさいでしょうよ、韓国の方が。

 

韓国を無条件に擁護して、人権派キドリなのか、リベラル派を自認しているのかわからないが、そういう人こそが韓国を蔑視する意識があることを知った方がいい。そうでないなら、韓国以外のフランスやアメリカやロシアについても、なにかあるたびに毎回「ヘイト!」「ネトウヨ!」と騒ぎ立てなくてはなるまい。ヘイトって、いつからそんなに軽く、守備範囲が広くなったのだ。

歴史上のすべてがとは言わない。国民のすべてがとは言わない。しかし、いま両国間で起きている数々の問題について言うなら、韓国に理はない。

国際的な約束を守っていない(旭日旗は現在も正式な自衛隊の旗で、国際的に日本の象徴とも認識されている。日本支配時代を想起させると言うなら、日本国自体が存続しているのであり、日本そのものを否定しなくてはならなくなる。それこそ人権侵害だ)。
法と国家間の合意に基づいた主張をしていない(賠償問題は、日韓合意で完全かつ最終的に解決している)。
責任を求める対象がちがう(よって、元徴用工と称する人たちへの賠償を正当とするなら、韓国政府がそれをするべき)。
証拠が薄弱。事実が確認できない(あの自衛隊機の画像では証拠にならない)。

 

こういうことを書くと、どういう批判が来るかもわかっている。
「在日の人の気持ちも考えろ」
考えているからこそ、書くのだ。こんな理不尽ばかりを押し通そうとする国の人だと思われるのは、彼らも心外だろう。

(例にならって書くが)僕には、過去に在日韓国人の恋人もいた。現在の問題についてどう思っているかわからないし、少なくとも僕のことは完全に忘れているだろうけど、彼女は日本国籍でないことを「これまで、あなたにしか話したことはないけど」と打ち明けた。彼女にそうさせること自体がおかしいじゃないか。
過去に日本人が差別をしてきたからなのだろうが、それについては我が国にもバカが多くてすみません、としか言いようがない。

「俺の祖父はブラジル人なんだ」と同じ調子で「わたしのルーツは朝鮮半島だよ」と言える世の中にならなくては健全とはいえない。これから好むと好まざるにかかわらず(個人的には安易な人口増加策としての移民は反対だが)、外国人居住者は増えていくわけである。

奇しくも、大坂なおみ選手が、テニスの全豪オープンで優勝し、全米オープンからの連覇を達成したという、めでたいニュースが数日前にあった。彼女は、ハイチ系日本人で、アメリカ育ち。こういうことが当たり前になっていく。

世界の国々を歩いてみれば、純血なんて、数代前の先祖までしか辿れないから根拠もないし、なんの意味もないことがわかる。

以下は「ドイツ人は嫌いだ」というイギリス人男性がDNA検査をした結果のドキュメンタリー映像だ:

www.youtube.com

韓国人、北朝鮮人だけが「話題にしない方がいい人たち」であり続けていいはずがない。
いいことはいい、悪いことは悪い、それだけだろう。

繰り返すが、「かわいそうな韓国」と見下す人たちこそが、異常な擁護姿勢を見せる。もしくは現政権への批判に利用する。

 

筑波大学大学院に古田博司教授という方がいて、大学院生としてソウル大学に留学した経験がある。筑波大で博士号を取得したのち韓国に暮らし、帰国して韓国社会や朝鮮史の学者になった。サントリー学芸賞、読売・吉野作造賞受賞。日韓で統一した歴史見解を模索した試みである日韓歴史共同研究委員として折衝にあたり、前出の黒田勝弘氏同様、韓国に関する著書多数。

この、韓国を知悉した古田博司教授が、いま、韓国についてはこのように説いている。

「教えず、助けず、かかわらず」

 

千年たっても変わらないのは、「この二国は対等な国同士である」となることを願うばかりだ。
対等だからこそ言うべきは言う必要があるし、ウソやごまかしには徹底抗戦しなくてはならない。

リスペクトを払わないのなら、古田教授の教えに従って、日本は新潟から鳥取あたりまでの海に、びっしり高性能モーターを取り付けて、島ごとハワイの方へ逃げたるぞ。
そうできないものだろうか……。