月刊ショータ

元電通コピーライター。ずっと自称コラムニスト。著書『広告業界という無法地帯へ ダイジョーブか、みんな?』、『カウボーイ・サマー 8000エイカーの仕事場で』

アメリカンなミュージック

浅生鴨さんが主宰するネコノスから『異人と同人4 推し本』という同人誌が出まして、これは60人の参加者各人が「自分の”推し”を書き綴る」ものである。

私はかねてより「カントリーミュージックの普及」をライフワークとしているので、当然カントリーについて2000字書いた。
その中で〈「現代カントリーならこの人!」というならモーガン・ウォレン(Morgan Wallen)を挙げる〉と紹介させてもらった。

この月刊ショータでもたまにカントリーソングの邦訳を手がけてきているが、今回もそのシリーズである。モーガン・ウォレンの曲については過去にも”7 Summers”を取り上げていて、この度ご紹介する”Sand in My Boots”も同じアルバム”Dangerous”に収録されている。

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これはCDで買えば2枚組で30曲が収められていて、驚くほど捨て曲がない。全米チャートで#1にもなっている、大変すばらしい作品。

さらに驚くことに30曲中7曲を除いてすべてが、酒にまつわる歌か、もしくは酒が登場する歌なのだ。

彼は今年の四月にコンサートを直前になってキャンセルし問題になったが、おそらくアルコホルの問題を抱えているのではなかろうか。

カントリー業界ではアルコホル依存症のアーティストは(どの業界とも同じく)少なくないが、50年代にはハンク・ウィリアムズが、80年代にはキース・ホイットリーが、それが原因で亡くなっている。
モーガン・ウォレンもまさか……、と私は密かに心配しているので、くれぐれも酒はほどほどにしてください。

語りだすとキリがないから控えるが、私は彼の音楽は、草のにおい、ウィスキーのにおい、水辺のにおい、淡い恋のにおいなど、とにかくアメリカのにおいが感じられて、大好きだ。

『推し本』を読んで、これを読んで、彼の歌を聴くと、何倍もたのしめるはずだと思って、以下訳しました。

 

“Sand in My Boots” Written by Michael Hardy, Josh Osborne and Ashley Gorley

She asked me where I was from
I said: Somewhere you never been to
Little town outside of Knoxville
Hidden by some dogwood trees

彼女は俺の出身地を訊いてきた
俺はきみが行ったことないところ
ノックスビル郊外の ハナミズキの林に隠れたような小さな町さと言った

She tried talkin' with my accent
We held hands and waded into that blue water
She left her flip-flops by my Red Wings on the beach

彼女は俺の訛りをマネして話そうとした
俺たちは手をつないで碧い海に入った
彼女は砂浜で 俺のレッドウィングブーツのとなりにサンダルをおいた

Yeah, but now I'm dodging potholes in my sunburnt Silverado
Like a heart-broke Desperado, headed right back to my roots
Somethin' bout the way she kissed me
Tells me she'd love Eastern Tennessee
Yeah, but all I brought back with me was some sand in my boots

それなのに俺はいま 道路のくぼみを避けながら
日に灼けたシルバラードを運転している
心破れたならず者が故郷に向かうみたいに
彼女がキスしたとき
きっと彼女はテネシー東部が気に入ると思った
そう それなのに俺が連れて帰ったのは ブーツの中の砂だけさ

I said: Let's go shoot tequila
So we walked back to that beach bar
She said: Don't cowboy's drink whiskey? Huh
So we drank bottom shelf
She said: Damn, that sky looks perfect
I said: Girl you've never seen stars like the ones back home
And she said: Maybe I should see them for myself

俺は「テキーラ飲みに行こう」と言った
そして俺たちはビーチのバーに戻った
彼女は「ふーん カウボーイはウィスキーじゃないの?」と言った
だから俺たちは下の棚のやつをぜんぶ飲んでやった
彼女は「クソ 空がサイコーよ」と言った
俺は言った 「俺の地元みたいな星空は きみは見たことないはずだよ」
そしたら彼女は「自分の目で見に行かなくちゃ」と言った

Yeah but, now I'm dodging potholes in my sunburnt Silverado
Like a heart-broke Desperado, headed right back to my roots
Somethin' bout the way she kissed me
Tells me she'd love Eastern Tennessee
Yeah, but all I brought back with me was some sand in my boots

それなのに俺はいま 道路のくぼみを避けながら
日に灼けたシルバラードを運転している
心破れたならず者が故郷に向かうみたいに
彼女がキスしたとき
きっと彼女はテネシー東部が気に入ると思った
そう それなのに俺が連れて帰ったのは ブーツの中の砂だけさ

I said: Meet me in the mornin
And she told me I was crazy
Yeah, but I still thought that maybe she'd show up
Ah, but now I'm dodging potholes in my sunburnt Silverado
Like a heart-broke Desperado, headed right back to my roots
Somethin' bout the way she kissed me
Tells me she'd love Eastern Tennessee
Yeah, but all I brought back with me was some sand in my boots
Yeah, but all I brought back with me was some sand in my boots

俺は「朝ここで会おう」と言った
彼女は「あなたはどうかしてる」と言った
そうだね それでも俺は彼女が現れるかもしれないと思っていた
俺はいま 道路のくぼみを避けながら
日に灼けたシルバラードを運転している
心破れたならず者が故郷に向かうみたいに
彼女がキスしたとき
きっと彼女はテネシー東部が気に入ると思った
そう それなのに俺が連れて帰ったのは ブーツの中の砂だけさ
そう それなのに俺が連れて帰ったのは ブーツの中の砂だけさ

(対訳:前田将多)

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『推し本』は、さすがそれぞれが好きなものについて書いたものなので、愛が溢れていていい本です。ぜひ読んでほしいです。

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