月刊ショータ

元電通コピーライター。ずっと自称コラムニスト。著書『広告業界という無法地帯へ ダイジョーブか、みんな?』、『カウボーイ・サマー 8000エイカーの仕事場で』

「大切な、大切な、いのちの話」

「男は孤独な旅人である」と言えば、大概のことは許されると思って生きてきた。去年はアメリカ横断もさせてもらったし、このゴールデンウィークにはバイクで四国を旅してくる。
子供のいる人なんかは、友人たちとテニスするのも、欲しいもの買うのも許可がいるようで気の毒である。どうせ男と女は分かり合うことなどないのなら、せめて好きなようにさせてもらいたい領域というのは確実にあるのである。それが人によって旅であったり、趣味であったり、仕事であったり。
インターネットでB級ニュースを読んでいたら、こんなものに出くわした。
妻とはセックスレスの男が、AVを観ているところを見つかり激怒され、鬱憤が溜まって路上でのわいせつな犯罪に及んだという。あまりに短絡的で同情する気にはなれないし、犯罪の動機をそんなふうに簡単に結論付ける裁判にも疑問があるが、それは一旦よい。僕はその妻に対して怒りを禁じ得ない。
セックスもなし、オ○ニーもダメって、なんだそりゃ。それはほとんど虐待である。食事も与えない、水も許さない、で健康的に日常生活を送れと言われているようなもので、何を考えているのかと言いたい。
こういう浅はかな態度は、「アメリカ基地は沖縄県外へ」なのに「徳之島への移設もNO」、それでも、防衛費を増大させて、自衛隊を強化し、己の力で自国の防衛に努めることも「トンデモナイ」、ただただ「戦争反対」だけを念仏のように唱える愚か者たちに通じるものがある。
アメリカ軍が駐留すること自体を喜ばしいことだとは思わないが、それのために我が国は徴兵もなく、のうのうと平和を享受できているのではないのか。
沖縄の負担を軽減するために各地方自治体が協力、というか分担、というか妥協し合わなくてはいけない際に、根源的な議論を全く無視した横車の押し合い。民意という名の縄張り意識だけでヒステリックに叫ばれても、いやいや、防衛ってのは地理的な条件に鑑みて国家の意志で決定してもらわないと。嫌がらせで決めてるわけじゃなくて、国全体の防衛のためにやってるわけで、民意というなら、「一部の人間が国全体の安全保障を歪めるな」だろう。
「うちにはいらない」のは分かったが、「国にはいる」のだ。
いつものように怒りがアサッテの方向に向かいかけたが、話を戻すと、セックス拒否、オ○ニー禁止で、家庭(夫婦)に平和など成立するものかということだ。
ここにこういうデータがある。
  • 「前立腺ガンの危険を抑えるために、男性がひと月の間にするべき射精回数は、二十一回以上である」
  • (AMA=アメリカン・メディカル・アソシエーションの報告による)
これがどういうことかお分かりだろうか。二十一回! ひと月を四週と考えるなら、週五回を毎週欠かさず続けて、さらにもうひとガンバリしないとクリアできないことである。しかし、そもそも、ちゃんとパートナーがいる人なら、女性はひと月のうち約一週間は「ダメな日」があるので、可能な日は毎日ということになる。気分もへったくれもない。
考えただけでちょっぴり先っちょがヒリヒリする数字である。
ちなみに日本人の年間のセックスの回数は四十八回ということで世界最下位だそうだ(デュレックス・セクシャル・ウェルビーイング・グローバル・サーベイ二〇〇七より)。
年間に四十八回のセックスつうことは、週に一回すら満たしていないのである。月に二十一回以上なんて遠く及ばない。
日本人男性は、常に前立腺ガンの危険と隣り合わせで生きていることになる。男は、常に死の恐怖と闘っているのだ。おわかりか?
しかし、押さえておきたいポイントは、月に二十一回以上求められているのは射精である。セックスではない。足りない分を独力で補うことが可能というわけだ。これはもはやリスクマネジメントと呼べる。
だから、亭主の健康を気遣う奥様で、しかもそないに毎晩求めに応じる余力もないのなら、オ○ニーだけは許可してもらわないわけにいかない。
前立腺ガンというのは、マイナーに聞こえるかもしれないが、アメリカでは罹患数第一位で、死因の第二位だという。日本でも年々増えていて、二〇二〇年には肺ガンに次いで二位になることが予想されているという怖い病気だ(アストラゼネカ社のウェブサイト、www.zenritsusen.jpより)。
健康のためのわけのわからんサプリメントとか運動を勧めるくらいなら、オ○ニーを見て見ぬふりすることが愛情である。そこは、好きなようにさせるべき領域なのである。
思い出してほしい。「男は孤独な旅人」なのである。長く険しい性の旅路も往かねばならぬ時があるのだ。己のため、家族のため、生きるために……!
男性が、女性の生理についてとやかく言うだろうか。言えまい。そこは「デリケートな部分」として、そっとしておくのが礼儀だ。それを咎めるとか禁止するとか激怒するとか、大きなお世話なんじゃい!
そこで僕は、オ○ニーのことを「前立腺ガン予防体操」と呼ぶことにしている。「運動」でもよいが、健康イメージを付加するために体操としている。
最近は我が家では、体操選手として認められるようになってきている。現役の体操選手として応援すらされている気がする。愛されているからこそ、長生きしてほしいと思われているのでしょうな。前立腺ガンは怖いですからね。
本日は、大切な、大切な、いのちの話をいたしました。
ごきげんよう。
(了)