月刊ショータ

元電通コピーライター。ずっと自称コラムニスト。著書『広告業界という無法地帯へ ダイジョーブか、みんな?』、『カウボーイ・サマー 8000エイカーの仕事場で』

「クレイジーでビューティフルな彼女の歌」

カントリーソングの話をしたい。たまにやるシリーズである。
たとえば過去にはこんなのも。

monthly-shota.hatenablog.com

 

誤解を恐れずに言うと、僕が女の人を人間と認めたのはいつ頃だったろうか。
少年時代には、僕は女の人があまり好きではなくて、なるべく話すことなく、関わらずに学校生活を送ろうと考えていた。

「あの人たちは、僕らと同じではない」
「しゃべり方がちがう」
「走り方がちがう」
「ぶったら泣く」(ぶつなクソガキ)
「ボール投げるのがヘタ」
「字がうまい」
「髪の毛がきれい」
「なんかいいにおいがする」
「かわいい」

結局、好きなんかえ!

今の子供たちは知らないが、少なくとも僕の幼少時代など、男同士の遊びとかスポーツとかケンカに、女子の分け入る余地はなかった。力が強い者、声が大きい者、もっと正確に言うと、相手を躊躇せずぶん殴れる者が最後には勝った。
政治的に正しかろうがそうでなかろうが、昭和の子供というのは事実、そういう世界にいたのだった。

それを指さして「ミソジニー(女性蔑視)!」だとか「マチズモ(男性優位主義)!」だとか感じる人もいるかもしれない。「はい、そうでした」としか言えない。

動物とそう変わらぬ連中が、より高等なモノの見方や考え方を学ぶのは、もう少しあとになってからだ。それが成長する、すなわち人間になっていくということだ。

 

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うちの寅ちゃんみたいに無邪気なガキが第二次性徴を迎えるころには、男子は好きな女子を神聖化し、偶像化するようになる。
「このコは姿かたちと同じように、心も完璧なのではないか」
「絶対に悪いことやズルいことはしないのではないか」

これが例の「アイドルはうん○しない」という定説につながる。

だけど実際には、女だってウソもつけば浮気もする(個人差があります。うん○については未確認)。

僕に関して言えば、はじめて付き合った女の子が自分の高校で新しいカレシをつくって、僕を捨てたときにひどいショックを受けたものだ。

「あぁ、女の人って、こんな残酷なことをするんだ……」

以降、ハタチ過ぎまで女性不信である。この間、人として認めなかったのである。
女の人ぜんたいを、僕の心の中の刑務所に入れたのである(アホ)。

はじめの疑問「僕が女の人を人間と認めたのはいつ頃だったか」について、なにかひとつの契機があったわけではないが、大人になるにつれて、何人かの女性と付き合い、またフラれたりなんかして、思い余って結婚して、いつしか「女の人も人間なんだ」と認めることになる。
ただし「ちがう人間」としてである。

 

男が女に対して「わかってたまるか」と思うように、女のことだって男からはおよそわかってないのだろう。
しかし、「わかりたい」と思いつつ、いつまでもわからない状態がつづくところに、男と女が飽くことなく惹かれあう何かがあるのかもしれない。いや、最近はもう「わかり合えないことがわかった」くらいだ…。

前置きが「もう入れて♡」というくらい長くなったが、すてきなカントリーソングを紹介したい。

「彼女はイカれてる。だけど、それを美しいと、僕は思ってしまうんだ」という、男のどうしようもない気持ちである。ここ数年でもっとも僕の心に響いたラブソングであった。

これ以上の説明は不要だと思うので、対訳とビデオをお楽しみください。
クレイジーな恋を。

 

“Beautful Crazy” by Luke Combs

 Her day starts with a coffee and ends with a wine
Takes forever to get ready so she’s never on time for anything
When she gets that come get me look in her eyes
Well it kinda scares me the way that she drives me wild
When she drives me wild

彼女の一日はコーヒーではじまり ワインでおわる
支度するのにいつまでもかかるから 何事においても遅刻する
彼女が近寄ってきて 見つめ合うと
どれほどたまらない気持にさせられるか なんだか怖いくらいだ
彼女がぼくをたまらなくさせるとき……


Beautiful, crazy, she can't help but amaze me
The way that she dances, ain't afraid to take chances
And wears her heart on her sleeve
Yeah, she's crazy but her crazy's beautiful to me

美しくて イカれてる 彼女はぼくを驚かせてばかり
彼女が踊るすがた 冒険を怖れない態度
歯に衣着せぬもの言いも
彼女はイカれてる だけどそのイカれ方を ぼくは美しいと感じてしまうんだ


She makes plans for the weekend, can't wait to go out
'Til she changes her mind, says, "let's stay on the couch and watch TV"
And she falls asleep

彼女は週末の計画をする 出かけるのが待ち遠しそうに
なのに気が変わって 「ソファでゴロゴロしてテレビみよっか」と言いだし
やがて眠ってしまう

Beautiful, crazy, she can't help but amaze me
The way that she dances, ain't afraid to take chances
And wears her heart on her sleeve
Yeah, she's crazy but her crazy's beautiful to me

美しくて イカれてる 彼女はぼくを驚かせてばかり
彼女が踊るすがた 冒険を怖れない態度
歯に衣着せぬもの言いも
そう 彼女はイカれてる だけどそのイカれ方を ぼくは美しいと感じてしまうんだ

She's unpredictable, unforgettable
It's unusual, unbelievable
How I'm such a fool, yeah I'm such a fool for her

彼女は予測不可能で 忘れられなくて
これはフツウじゃない 信じられない
ぼくがどれほど夢中か どれほど彼女に夢中か

Beautiful, crazy, she can't help but amaze me
The way that she dances, ain't afraid to take chances
And wears her heart on her sleeve
Yeah, she's crazy, she's crazy, she's crazy
But her crazy's beautiful to me
Her crazy's beautiful to me

美しくて イカれてる 彼女はぼくを驚かせてばかり
彼女が踊るすがた 冒険を怖れない態度
歯に衣着せぬもの言いも
そう 彼女はイカれてる おかしい 狂ってる
だけどそのイカれ方を ぼくは美しいと感じてしまうんだ

(対訳:前田将多)

 

Official Video:

youtu.be