アメリカを旅していた時のこと、オレゴン州ポートランドでとあるレザーショップに入ったところ、支払いカウンターにこのような表示、というか宣言が貼ってあった。
曰く、「私たちはどなたであってもサービスを拒絶する権利があります」。
- 「どなたであっても満足を保証します」ではない。
- 「我々は、従業員とその尊厳を、カバンを売ることよりも大切にしている。もし誰かがいかなる方法においてでも、彼らに大声で怒鳴り散らしたり、脅すようなことがあるならば、そいつは顧客としてクビだ」
- 「我々は、九十九パーセントの方々は、正当なクレームである場合であっても、礼儀正しくて親切で我慢強く、そして丁寧であることを知っている。ただ、残りの一パーセントの連中がいる。彼らはつまらないことに対して大声を出し、脅しをかけてくる(たいていの場合、なにかをタダで得るか、値引きをさせるために)」
- 「そういう連中には、我々のカバンを持ち歩く仲間になってもらわなくて結構だ」
- 「我々にとって、我々の仕事と、我々の顧客は等しく大切なのである。ここまでお付き合いいただきありがとう」
- 「社長、それは間違っています」と言うと、確かにカドが立つ。しかし、「まぁそういった方向で検討しつつ、今後の課題ということで共通の認識を持たせていただき、幅広い視野で状況に対応させていきたいと思います」などと、梅田から難波まで行くのに、JR大阪駅で環状線に乗って、鶴橋で千日前線に乗り換えて行くような回りくどい言い方をしてもなんの意味もないだろう(大阪の人にしかわからない比喩で失礼。いや、大阪の人もわからないかも)。
- 社長:「今後、経営の効率化のために、従業員は全員、首元にICチップを埋め込んでもらうことにします」
- 社員:「未来にチャレンジ!」
- 社長:「今後、経営の骨太化のために、下請け業者どもをバール状のもので殴打するつもりでブッ叩くように」
- 社員:「明日のためにもっとずっと!」
ダメだ、ダメだ! もっとずっとガンガンにブッ叩くようにしか聞こえん。
そうだ、意味を曖昧にする常套手段はアルファベット化だ。インポはED、家庭内暴力はDV、ハゲはHAGE、いや違った、AGAだ。
だから、チャレンジは、なんか……「Cコール」とかにしたらどうか。
- 社長:「今後、経営の自分ゴト化のために、従業員は私以外を全員管理職とします。よって私にだけは残業代がつきますが、私は常に会社のことを考えていますから業務時間は毎日二十四時間とします」
- 全員:「Cコール!!」
- 「シーコール!!」(涙声)。