月刊ショータ

元電通コピーライター。ずっと自称コラムニスト。2003年より書いていた月イチコラム「月刊ショータ http://monthly-shota.jp 」をhatenaに転載しました。そのため、一部お見苦しい点があることをご容赦ください。

「明日を信じて」

他の国のことはよく知らないから想像で書くのだが、日本には女性専門の独特な職業がある。「いるだけ」が仕事の職業だ。無礼を承知で言うが、たとえばクラブとかキャバクラのおねえさん、そしていわゆるグラビアアイドルと呼ばれる人たちがそれにあたる。
週刊誌や漫画雑誌の本文であるモノクロページを活版印刷で刷り、巻頭のカラーページをグラビア印刷で刷ったことから、グラビアアイドルという和製英語が生まれたことはよく知られている。
モデルでもなく、俳優でもなく、アーティストでもなく、アイドル。つまり偶像。
ヌードモデル(たとえば米国プレイボーイ誌のプレイメイトのような)やポルノ女優のように、自慢の美しい(まぁ美しいは主観だが)裸体で性的刺激を提供することが目的でもなく、トークショウホストのように話術を駆使するでもなく、ファッションモデルのように均整のとれた肢体や容姿を、まさにモデル(見本)として使うわけでもない。考えれば考えるほど、存在意義の不明確な、独特で不思議な職業である。
政治の世界では、取るに足らない立候補者を泡沫候補だなんて呼ぶことがあるけど、グラビアアイドルという特異な人たちも、まさに泡のように現れては気付かない間に消えてゆく。パッと思い浮かぶだけでも、安西ひろこ井上和香小野真弓川村ひかる小阪由佳時東ぁみ夏川純松田純矢吹春奈山本梓リア・ディゾンなどなどがいつの間にか表舞台から消えている。いや、死んでもいない人間を「消えた」だなんて一刀両断にするのは申し訳ないし、検索をしてみれば、結婚に伴い引退していたり、健気にブログを更新したりしているようなのだが、アイドル活動は遅かれ早かれどこかで行き詰まるのは目に見えている。まさに泡沫、バブルな存在なのである。「有名である、ということだけで有名」というわけのわからない状態なのだから当然といえば当然だ。
それでもそうなりたいワナビーちゃんや一般には無名のグラビアアイドルたちがわんさといる。まさにグラビアのページをめくるが如く、次から次に現れて引きも切らない。
冷静に考えると、視聴者や読者である我々にグラビアアイドルから受ける恩恵はない。大半の人は消えていくにつれて忘れるのだからそこに異論は挟めないはずだ。そりゃその時は好みのタイプでファンかもしれないが、何かを教えてくれるわけでもなく、演技力や歌唱力で感動させてくれるわけでもなく、脱いでくれるわけでもないのだ。
まさにそこに「いるだけ」の人たちなわけだが、彼女たちは、男たちの明日を信じる力によって支えられている。「明日、もしかしたら脱いでくれるかもしれない」希望。「いつかデキるかもしれない」という、脈絡のない飛躍。
脳のなんていう部位が刺激されたらそんなふうに思い込むように出来ているのかわからないが、とにかく男はそういうふうにものすごいポジティブシンキングで生きて、おカネや時間を費やす生き物だ。バカと罵られようがアホと蔑まれようが。
飲み屋のホステスもそこに「いるだけ」でなぜか飲み代が何倍にも上乗せされて、客のテンションが上がるということになっている。「もしかしたらヤレるかも」効果だ。出会い系サイトにはサクラがいて、会話を引き延ばし引き延ばしして会えそうな素振りだけ見せては、会話を長引かせて課金を増やしていくそうだ。これが最も露骨なかたちでの「もしかしたらヤレるかも」効果だろう。
アマゾンのサイトで適当にグラビアアイドルの写真集を探してみればそこでレビューを見ることができる。大概は「もっと脱いでほしかったのに期待はずれ」「もう少しで乳首が見えそうなのに」みたいなコメントばっかりだ。「もしかしたらヤレるかも」効果の矮小版といえる。
ツイッターでも本人の顔写真かと思われる画像をアイコンにしている美人には何千、何万という大勢のフォロワーがいたりする。「もしかしたら」と思い込む男たちがフォローしちまうのだ。当然ある思想を広めるためのプロパガンダに利用されている場合もある。実際はフツーのメガネのおっさんだったりする。
そして、もしかしたらグラビアアイドルと……という、こんなバーが存在したらしい。
半年で一五〇〇万円(六本木店)、二四〇〇万円(新宿店)とは、売上もなかなかのものである。なにがグラドルなんかわかったものではないが。
あのホーキング博士でも英国の科学誌『ニュー・サイエンティスト』によるインタビューで「何について最も考えを巡らせているのですか?」という質問に対して、
  • 「女性だ」
と答えているのだ。
我々凡人もこの問題に関しては真剣に取り組まなくてはいけない。
ちなみに、ホーキング博士は「セックスクラブの常連だった」という微笑ましいニュースも数日前に報道されていた。
  • 「あの角を曲がったら、オレンジを山ほど抱えた美女と鉢合わせして、コロコロ転がったオレンジを二人で追いかけた先が秘密のセックスクラブの入口で、中にいたホーキング博士から、指一本動かさずともドえらいことになる奥義を授けてもらえるということも、もしかしたらもしかする」という希望を信じようではないか。明日を信じようではないか。自分を信じようではないか。
それはそれは、透き通るような、キラめくようなピュアな心で。