月刊ショータ

元電通コピーライター。ずっと自称コラムニスト。2003年より書いていた月イチコラム「月刊ショータ http://monthly-shota.jp 」をhatenaに転載しました。そのため、一部お見苦しい点があることをご容赦ください。

「勝手なことすんなよなー」

まずはこの画像をご覧ください(クリックで拡大)。 英語を解する人なら、こうなるはずである。 「あー倖田來未って亡くなったんだー。最近地震のニュースしか見てなかったからなぁ……って、死んでへんわっ」 という大阪名物ノリツッコミを一人ですることになるのである。 「memorial」は死んだ人を記念する「追悼の」という意味合いが強いのだ。だから、やたらと「一〇〇号のメモリアルホームラン」とか、現役なのに「芸能生活二十周年メモリアルコンサート」とか言わない方がよいのだ。ただの「記念」は「commemorative」、「周年」は「anniversary」という。 では次の画像をクリック。

「乗っ取る」ことを「jack」とは言わないのである。 それは「hijack」である。ハイジャックは一語なのだ。 なーんとなく、「hijack」→「飛行機を乗っ取る」→「高いところでその場を占拠すること」→「だから車を乗っ取るのはカージャック」→「バスを乗っ取るのはバスジャック」→「ジャックは乗っ取るという意味」みたいに勝手に拡大解釈されているようだけど、間違いである。

「バスを乗っ取る」のは「to hijack a bus」のはずなのだ。もしくは、「busjacking」のように動名詞としては使うようだ。

なぜなら、「jack」という言葉は、動詞なら車のタイヤ交換の時に行なう「ジャッキアップ(jack up)」のように、グーッと持ち上げるという意味になるからだ。「car jack」だとジャッキアップする器具(つまりそれがjackなのだが)と混同してしまう。 そして、おそらくだが、この「ガチャガチャ上下に動かして」持ち上げることから「jack off」で「シコシコする」という俗語になる。「jerk off」も同様に、前立腺ガン予防体操を意味する(一〇年四月号ご参照)。「jerk」は「グイグイ押したり(引いたり)する」こと。まぁ、jackと似てますわね。 「電車のホーム」。 「ホームに電車がまいります。白線の内側までお下がりください」のように公式なアナウンスとしてもまかり通っている言葉。 正式には「platform」である。 「プラットフォーム」→「フォーム」→「ホーム」と、これまた勝手な変換を経てそうなったものと思われる。 うぅ、は、恥ずかしい。いつから「home」になったんや。 このような、日本人の勝手な解釈や語意の変換は、英語の習得に本当に邪魔になっていると思う。こういう調べないと知りようもない間違いをイチイチ訂正しながら覚えることは、なんにも知らないまっさらな状態から習得を始めるより、ムダな労力や生みだす誤解が圧倒的に多いはずだ。 野球界では二〇一一年から、カウントはボールを先に言い、次にストライクを言うように、大リーグ形式に揃えられた。 今まで「ワンストライク、スリーボール」と言っていたのを、「スリーボール、ワンストライク」と呼ぶのだ。この前、草野球に行ったら、審判員のおっちゃんたちも早速大リーグ方式に倣ってカウントしていたので驚いた。早いね、おっちゃん。これでメジャー級やね。 しかし、僕らが米国から輸入されたのだから当然英語なのだと思い込んでいる野球用語については、前出の英単語と同様に、全くの間違いだらけであるようなのだ。 デッドボール、バックスクリーン、ランニングホームランなどなど、我々が当然英語だと思っているひとつひとつが、実際はなんと呼ばれているのか、詳しくは下記『イチローのサイズ』というコラムの第十二回を参照いただきたい。 http://homepage2.nifty.com/RieEzaki/mikio_html/baseball/ichiro/index12.html なんでこうなっちまったのか不思議である。ベイスボールを野球と訳したのは正岡子規だそうだが、一体これらのインチキ英語は、誰が考え出したのか。 スポーツは言語を越えて楽しめるという、人類が持つ数少ない発明のうちのひとつだと思う。用語が共通ならさらに容易に楽しめるはず(世界中で柔道の一本が「IPPON」であるように)なのに、ウソ英語はいらぬ混乱や当惑を生じさせる原因になるだろう。 自動車も同様だ。

  • 誤:フロントガラス=正:ウィンドシールド
  • 誤:ハンドル=正:ステアリングウィール
  • 誤:サイドブレーキ=正:エマージェンシーブレイク
  • 誤:バックミラー=正:リアビューミラー
  • などなど。ほんまええ加減にせえよ、ニッポンジン!

以前にも書いたように、僕も英語の専門家でもなんでもなくて、普通の日本人と同じように英語に困って、おそらく一生学び続けなくてはいけないうちの一人だ。知らない単語はたくさんあるし、聞き取れないことも多々ある。 しかし、まぁ平均的な日本人よりは英語を使えるという事実の下(一応、アメリカで大学出たからね)、たまに「どうしたら英語覚えられる?」と尋ねられることもあるので、今日は英語習得に関する僕の考えを少しだけお話しするとしよう。 なんの苦労もなく短期間でスラスラ話せてしまう語学の天才みたいな人がたまにいるようだが、全くの凡人である僕のような人間の方が、たぶん参考になる経験を持っていることだけは自信がある。

  • 【趣味の周辺でしか続かない】

僕がオススメするのは、趣味の分野に関する雑誌を購読することである。結局、興味のあることでないと、わざわざ外国語でまで読もうとは思わないのだ。 僕は勉強のため、高校時代に英字新聞を購読したことがあるが、ありとあらゆる記事が載っている新聞なんか読む気が起こらないから結果的には読まずに積まれていってしまうのだった。 でも、米国で筋トレを始めてから、その知識を得るためにトレーニング雑誌を読み始めると、(辞書を引きつつ)スラスラ読めた。でも、振り返ってみると、それは英語が読みたかったからではなく、トレーニングについて知りたかったから英語でも読めたのだ。 英語を読むことを目的にしてはいけないようだ。ここがポイントかもしれない。 日経ビジネスオンラインで、『英語は道具:銅メダル英語を目指せ』というコラムを書いている林則行さんという方は、大ヒットした映画やテレビドラマのDVDを字幕なしで見続けることを勧めている。引き込まれるほどおもしろくないとダメなのだそうだ。 とってもなるほどである。 林氏はファンドマネージャーとして世界でバリバリに働いてきた人だそうなので、僕などよりプラクティカルである。ご興味ある方は読んでください: http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110520/220060/ ちなみに、僕が指す「趣味の雑誌」にはアダルトなものも含む。 エロ本とまでいかなくても、アメリカには『MAXIM』をはじめとした男性のための娯楽誌がある。まぁ中身はオンナとスポーツとジョークと、少しだけファッションみたいな感じかと思うが、だって男の興味なんてそれでほぼカバーできるんだから仕方ないじゃん。 会社で見ている方は気をつけてクリックしてください: http://www.maxim.com/amg/ プレイボーイ誌だって、ただのエロ本と思っている人も多いかと思うが、エロスを基軸としながらも秀でたルポルタージュや時事批評やジョークで人気を得てきた経緯がある。 http://www.playboy.com/

  • 【ちゃんと洋楽を聴く】

洋楽を聴く人は一定数いると思うのだが、ちゃんと歌詞を聴いて「この歌は何を歌っているのか」知ることから英語を学べる機会というのは多い。裏を返せば、内容をわからずに洋楽を聴く人が結構多くて、僕からすれば「え、じゃぁ何を聴いているの?」と不思議な気すらする。 僕の高校時代はヘビーメタルやハードロック全盛だったのだが、そんな中でカントリーしか聴いていなかった自分について、今になって「もっと色々聴いておけばよかったかなぁ」と思うこともあるが、英語についてはカントリーから学んだことは非常に多い。 まず歌詞が聞き取りやすいし、単語も表現も日常で使えるものが多いのである。 Lady Antebellumレディ・アンテベラム)という難しい名前のカントリーユニットがある。「Need You Now」という曲で、二〇一一年のグラミー賞において最優秀レコード賞を含む五部門で受賞している。 たとえば、この曲の一番目のサビまでを例にとり見てみよう。

http://www.youtube.com/watch?v=eM213aMKTHg

  • 「Need You Now」
  • 1)
  • Picture perfect memories
  • Scattered all around the floor
  • Reaching for the phone 'cause
  • I can't fight it anymore
  • 2)
  • And I wonder if I
  • Ever cross your mind
  • For me it happens all the time
  • 3)
  • It's a quarter after one
  • I'm all alone
  • And I need you now
  • Said I wouldn't call
  • But I've lost all control
  • And I need you now
  • 4)
  • And I don't know how
  • I can do without
  • I just need you now

さて、解説しながら見てみよう。中学英語レベルかもしれませんけどご容赦を。

  • 1)
  • Picture perfect memories
  • Scattered all around the floor

「picture perfect」は「picture-perfect」と一続きで表記されることもあるが、「見た目に完璧な」「美しい」「絵になる」という意味である。そういう思い出が「Scattered all around the floor」で「床中に散らばっている」である。ここの「all」はあとでも出てくるが、強調するための語なので、無くても意味は同じ。「床に」か「床中に」かの違いか。 写真を破いて床に投げつけたのかな、などと想像が膨らむ冒頭である。

  • Reaching for the phone 'cause
  • I can't fight it anymore

「reach for~」で「○○に手を伸ばす」というイディオムである。 手を伸ばすと言いたい時に「stretch my arm to~」とか「try to touch~」と言いたくなるかもしれないが、これを知っておくと早い。 「fight」はお馴染みの単語だろうが、こう使うと「たたかう」というか「抗う」になるから、「電話に手を伸ばす。もうがまんできないから」となる。

  • 2)
  • And I wonder if I
  • Ever cross your mind
  • For me it happens all the time

「wonder if~」で、「~ではないかと思う」。「wonder when~」なら「いつ~だろうかと思う」。便利な表現である。 「cross your mind」は、「心をよぎる」。日本語と全く同じなのだ。「cross my heart」であれば、「胸で十字を切る」ことになる。つまりキリスト教的に「誓う」ということ。 「happen all the time」は、「しょっちゅう起きる」。「happen every time」=「毎回起きる」とかバリエーション含め、これもよく使う表現である。 「私のことを思い出したりするのかな。私はしょっちゅうしてるのに」となる。

  • 3)
  • It's a quarter after one
  • I'm all alone
  • And I need you now

日本人にはわかりにくいが「a quarter after one」で、「一時から四分の一後」だからつまり「午前一時十五分」だ。「a quarter to (till) one」なら「一時十五分前」だ。 「all alone」のallも先ほどと同じで強調だから「ひとりぼっち」。 「午前一時十五分、私はひとりぼっち。だから、あなたが必要なの」

  • Said I wouldn't call
  • But I've lost all control
  • And I need you now

「said I wouldn't call」は、学校で習った時制の一致というやつが適用されている。「said(言った)」したのは過去のことで、その時点から見て未来に関して「will not call(電話はしないだろう)」と言ったのだ。だから「will not」ではなくここでは「would not」なのだ。 「I have lost control」は過去完了形。「コントロールが効かなくなってしまった」である。同じような表現では「I have lost my mind」、「I have gone crazy」で「正気でなくなってしまった」などがある。 「電話はしないと言ったのに、抑えきれなくなってしまったわ。あなたが必要なの」

  • 4)
  • And I don't know how
  • I can do without
  • I just need you now

「I don't know how~」は「どのように~かわからない」。先ほどの「I wonder if~」と構造は同じである。「(あなた)なしでどうすればいいかわからない。あなたが今必要なの」 ……という歌なのですねぇ。たったこれだけの歌詞で、これほど多く学べるわけです。こうして見てみればとても単純な歌で、こんな複雑な世の中になってもこういう「あなたが必要」しか言っていない真っ直ぐな歌が評価されている。音楽はこうでないと、と単純な人間である僕は思う。 楽しんでいただけましたでしょうか。「洋楽で学ぶ英語教室」でした。