月刊ショータ

元電通コピーライター。ずっと自称コラムニスト。2003年より書いていた月イチコラム「月刊ショータ http://monthly-shota.jp 」をhatenaに転載しました。そのため、一部お見苦しい点があることをご容赦ください。

「私から言えることはひとつだけです」

世の中には知らない方がいいこと、知りたいけど知らない方がいいのがわかっていることというのは多い。

ベランダでふとんをバタバタしている人がいるが、そこで払われた埃はどこへ飛んで行って、どれくらい人に吸い込まれているのか。 清潔でいえば、このトイレのドアノブを触らないと外に出られないが、前回通った人は手を洗ったのだろうか。 バイ菌でいえば、それどころか居酒屋のこのグラス、昨晩大学生が調子に乗ってチ○コとか突っ込んでいやしまいか。 突っ込んでいるでいえば、食品にガンガンに突っ込まれているアスパルテームだとか、L-フェニルアラニン化合物だとか、アセスルファムカリウムだとかの人口甘味料が本当のところ人体にどうなのか。 人体への影響でいえば、外食で使われる野菜は、どこの国でどんな環境の下で作られているのか。スーパーに行けば、どれも栃木県産とか北海道産とか国産なのに食糧自給率が四十パーセント(※註釈1)ということは、どういうことなのだろう。 スーパーでいえば、陳列された大量の食品はどれくらい売り残って、どこに廃棄されるのか。豚の飼料になると言われても、個装されたお菓子なんかを一つひとつ剥いてバラすとは思えない。 売れ残りでいえば、ペットショップで売れ残った犬や猫はどこへ行くのか。 命でいえば、この二歳くらいの子供を連れたオバハンは、つまり約三年前にセックスしたのだろうか(あ、これは答えはわかってんねんけど、詳細は不要)。 したのだろうかでいえば、後輩の神市(仮名)は、入社間もない頃「あややはまだバージンですかね?」ということに頭を悩ませていた。知らないよ! 知らないし、知ることもできないし、それをオレに訊いてどうする。

疑問はいくらでも連鎖する。

僕は以前から、排水口に流したスープの残りやヒゲ剃りのカスや歯磨き後の「ペッ」が本当にきれいにされて自然に還って、そして水道に戻ってきているのか不思議であった。

先日テレビを観ていたら、牛乳を水に流してしまうと、それを再使用できる程度まで希釈するのにはものすごく大量の水を要してしまうという実験をしていた。だから、牛乳や味噌汁やカレーは、下水に流さないでほしい、という。 たとえばカレーなら、まずキッチンペーパーや新聞紙で拭き取ってから洗浄に回してほしいのだという。

僕はそんなこと知らなかったので大いに頷き、今度からなるべく食べ物や飲み物は飲み干すようにしようと思ったのである。

しかし、考えてみたら、人間、食べ物を食べて生きていく限り、ウ○コやシッコは出るわけで、どのみち同じじゃねえのかという気もしてくる。

飲み干したら飲み干したで、それだけ余分にオシッコが出るわけで、それがどこに行くって、下水に流れるのだ。

で、その下水が処理されて、巡り巡って、また僕らの飲み水として帰ってくるのであれば、「味噌汁を溶いた水」と「ウ○コシッコを溶いた水」のどちらが原料としてマシなのかは明らかではないか。

現代の下水処理の方法がどんな最新科学技術を駆使したものかは知らないが、きっと多くの人が知りたくもないはずなのだ。知ると言うことは限界も知ることになる。

都民が質問。

  • 「では、ウ○コもシッコも、完全にキレイにできるんですね?」

下水処理施設の職員の方がこう答える。

  • 「『完全にキレイ』という表現は我々は使わないのですが、バクテリアによって人体に影響のないレベルにまで分解はできます」
  • 「え、影響がない。ということは、飲んでるかもしれないけど平気ってことですよね?」
  • 「……ええ、そう、安全といって大丈夫ということです」
  • 「いやいや、今の一瞬の間はなんですか。つまりウ○コ成分は入ってるんですか、入ってないんですか?」
  • 「何をもってウ○コ成分とおっしゃっているかという問題がですね……」
  • 「定義を議論したいわけじゃなくてね、ウ○コはゼロパーセントだっていえるんですか?」
  • 「あのー、……いいですか。現時点で、私から言えることはひとつだけです」
  • 「なんですか。おっしゃってください」
  • と、一度姿勢を正す都民。職員が真っ直ぐ見据えてくる。
  • 「この場で聞いたことは、一切口外しないと約束できますか?」
  • 「わかりました。約束します」

説明員が表情を一瞬和らげると、囁くように言う。

  • 黒木メイサも、我が自治体にお住まいです」
  • 「……なら、いいです」

いや、なんでこんな話をしたかというと、世界というのはそのように成り立っているということを言いたいのだ。実態がどうあれ、我々が認識しうる限界こそが、我々の住む世界なのである。そしてもっと言えば、認識しうる姿こそがもはや実態であるのだ。

エコの話。 これだけ地球温暖化が言われて、そのために二酸化炭素削減の努力を企業ごと、国家ぐるみで行なわれている最中(※註釈2)、実は地球は寒冷化に向かっているという説も根強いではないか。

残念ながら、双方とも僕には難しすぎて全くわかりませんでしたが、念のため紹介:

日本経済の話。 日本は没落すると言う人。日本は再浮上するという人。 以下、実際に書店で見てきた書籍名ですが、子供のケンカのようなバカバカしさを感じてほしいので、あえて著者名は省略します。ご興味ある方はご自分で調べてみてください。

  • 『絶対よくなる! 日本経済』
  • 『日本経済余命3年』
  • 『2014年日本国破産 衝撃編』
  • 『2011年日本経済 ソブリン大恐慌の年になる!』
  • 『日本経済の真実 ある日、この国は破産します』
  • 『日本経済このままでは預金封鎖になってしまう』
  • 『消費税で日本崩壊』
  • 『日本は破産しない!』

最後の「日本は破産しない!」はもはや涙声ですよね。

国際情勢の話。 チャイナが世界を牛耳るという人。崩壊に向かっているという人。

  • 『中国ひとり勝ちと日本ひとり負けはなぜ起きたか』
  • 『日本支配を狙って自滅する中国』
  • 人民元がドルを駆逐する』
  • 人民元基軸通貨になる日』
  • 中国経済・隠された危機』
  • 『中国の経済専門家たちが語る ほんとうに危ない! 中国経済
  • 『中国が世界を思いどおりに動かす日』
  • 『中国 危うい超大国
  • 『やがて中国の崩壊がはじまる』
  • 『中国は崩壊しない』

もうなにがなんだか……。 先ほどの「日本は破産しない!」と「中国は崩壊しない」を並べてみると、世界がとっても平和に見えてきますね。

こんなものまで。

  • 『今こそ金そして銀を買う』
  • 『金は暴落する! 2011年の衝撃』

こんな感じだから、(国や環境の)将来のこととか、自分の人生のこととか、考えるのが本当にアホらしくなってくる。わからんもんはわからんのだし、結局なるようにしかならんのだ。

おそらく人は、自分が信じたい未来を補強する説にしか興味を示さない。だって、僕がそうだし。

きっと日本は大丈夫だ。(チャイナの、そしてあらゆる)バブルはいつか崩壊する運命だし、日本は景気の波に翻弄されながらも凌いでいける。僕は日本人ほど優秀で勤勉な国民は見たことがない。 ちなみに、僕はそないに他の国民を見てはいない!

人類は大丈夫だ。地球が温暖化しようが寒冷化しようが、適応して生きていける。とりあえず、ボタンひとつでクーラーもヒーターも切り替え可能だからなんとかなる!

どうせ考えてもわからないのだから、いいように思っておくのが幸せに生きる方法ではなかろうか。

ただの一杯の水でも、メイサのオシッコだと思って飲めば、ほら、すぐにでも幸せになれ……、ここ大阪やん! メイサ、ゼロパーやん

(了)

  • ※註釈2:二〇一〇年十一月二十四日の気象庁の発表によると、世界気象機関(WMO)の調査で、温室効果ガスの二〇〇九年における世界平均濃度が、過去最高値を更新したそうだ。大気中の二酸化炭素の平均濃度は三八六・八ppmで過去最高だった前年を一・六ppm上回ったという。
  • (二〇一〇年十一月二十五日産経新聞より抜粋)

いかにムダな努力とムダなお金の遣われ方がしてきたかだ。