月刊ショータ

元電通コピーライター。ずっと自称コラムニスト。著書『広告業界という無法地帯へ ダイジョーブか、みんな?』、『カウボーイ・サマー 8000エイカーの仕事場で』

そんなもんどうにもなるかぃ

まずはこちらのアンケート結果をご覧下さい。
日本民営鉄道協会による二〇〇八年度「駅と電車内の迷惑行為ランキング」である:
ふむふむ、まぁわからないでもない。では次。
「gooランキング」によると「満員電車で困ることランキング」は:
  • 一位 雨の日の湿気
  • 二位 汗のにおい
  • 三位 人のもっているカバン(リュックサックなど)が当たる
  • 四位 香水のにおい
  • 五位 中につめないで、ドアの周りだけ人がたまっている
  • (以下略)
  • http://ranking.goo.ne.jp/ranking/999/jampacked_car/
モニター(サンプル)は、前者がおよそ八百人、後者はおよそ千人で男女半々というから、公正なはずなのだが、この「お嬢ちゃま感」はなんだろう。いくらなんでも、「満員電車で、最も、何よりも、困ること」が「湿気」て……。そんなもんどーにもなるかい。
電車内で、最も困ること、嫌なものの、たまらんものの、第一位は決まっておろうが。
キチガイしかないだろ。
これに反対意見を述べる人がいるだろうか。もちろん、正常な人間で、だ。
ちなみに、いわゆる放送禁止用語というのはテレビ・ラジオの放送における「自主規制」なので、第三者や法律が禁止しているわけではない。だから、こんな個人のウェブサイトで、キチガイは書いていけない言葉ではない。不適切かもしれないが、公共の場に不適切なのはキチガイも同様である。
すまんがそこに愛はない。
愛のある好例として、敬愛する故中島らも氏のブルース曲「いいんだぜ」があるが、残念ながら、あの域に達するほど僕は人間ができていない。これはこれで涙のチョチョ切れる歌なのだが、僕には無理だ。「ぶちこんでやる」ことはできそうにない……。
興味のある方は下記Youtubeででも探してみてください。職場や周囲に人がいる場所で再生する際にはお気をつけあれ。
先日、僕は大阪市地下鉄に乗って、端っこの席に腰を下ろした。車両は席が六割くらい占められている感じで、まぁすいていると言っていい。
奥の方で中年男性が元気に話す声が聞こえてくる。一方がもう一人に、何やらを熱心に説明している様子だった。
「……で、ワシ言うたったんや『そんなわけないやろ』て。でも、よくよく聞いてみると、そいつがな、後藤田さんとこのセガレと知り合いだったんや。な? ところが! や……」
という具合に。しかし、はじめは気にも留めなかったのだが、奇妙なことに、話し声が一人分しか聞こえてこない。二人の会話かと思っていたら、誰も相槌打つ者がいないのだ!
降り際に見たら、全身革ジャン・革パン・革アクセサリーのいかにもアブナそうなおっさんだった。一人で話し続けていた。周りの人は、彼の演説をBGMと扱っていた。
キチガイである。
キチガイで不適切なら、キティガイ。キティちゃんである。
東京の大江戸線に乗った際、込み合った車内で、座席にいる男の前だけ空いていた。そこに立とうとした僕のキティちゃんセンサーが鋭く反応した。
何か目がおかしいのだ。そういう「おかしさ」は表現が難しいが、明らかに違うのだ。
やがて、そいつは膝に置いていたクリアファイルをカプッと口にくわえた。大人しい感じの、キティちゃんだったのだ。
僕は自らの慧眼を静かに誇った。センサーをONにしておいてよかった……。
またある時、近鉄電車で通勤中、電車はよく込んでいた。吊り革の前に立つ僕の横にヨレヨレのスーツを着た太ったおっさんがいた。そいつがまた不快なヤツで、洟をジュルジュル言わせている。その上、洟を拭いたその手で再び吊り革を握る。僕は「吊り革を触れない神経質な人」とか「便器に触れないように空気椅子の姿勢でウ○チする人」とか、以前は理解できなかったのだが(どんな清潔か知らんが、自分かてウ○チしてるやん)、吊り革に関しては最近、大きく揺れた時に最低限しか触らないようにしている。日中に必ず手を洗い、帰ったら真っ先に手洗いとうがいはするようにしている。おかげさまでこの冬は風邪を引かなかった。
こういう不潔なおっさんを目の当たりにすると、なおさらその決意を堅くする。おっさんは時折、小脇に持っている缶から飲み物を啜る。おっさんの立ち位置が車両の端なので、それに気付いた人は車内で僕しかいない。チラッと見た時に、缶が金色だったから、まさかとは思った。だって、朝の八時前の通勤電車である。
しかし、やはりそいつは、発泡酒を飲んでいたのである。
こういうヤツを文庫本の角で「カパーン!」と殴ってやっても、罪にならない条例を作ってくれないだろうか。大阪市限定でいいから。
不況不況と言われて、必死に職探しをしたり、銀行の貸しはがしに遭って奔走している中小企業の社長さんとかがワンサといる世の中で、こんなヤツがのうのうと通勤している。そいつが社長でないことを祈る。僕が社長ならクビにしたいところだ。精神状態は知らないが、行為はキチガイである。キティちゃんまでいかないから、ララちゃんとでもしておこう。
大阪になぜだか多いような気もするのだが、文字通り怒り狂って怒鳴り散らしては駆け回るおばはん。逆に、やたら嬉しそうに笑みを浮かべては跳ね回るにいちゃん。なんか知らんがタイ人の悪口を延々連ねている男、などなどなど。
「暖かくなるとおかしなのが増える」という俗説が本当なのが怖い。天気予報のおねえさんもその内「今週は温帯低気圧が発達しますので、太平洋側ではキチGUYSに充分ご注意ください」と言い出しかねない。
不思議なことに、こういうキティちゃんやララちゃんが、一車両に同時多発したことはない。同じ車両にキティララが揃ったら、そこは修羅場だ。沈黙の修羅場だ。
女性専用車両と同じく、キティララ専用車両を是非設置してほしい。そして、その車両だけ途中で切り離して収容施設に直行してほしいものだ。
なぜそこまで言うかというと、迷惑だからだ。乗客に迷惑をかけない限りアタマがオカシかろうがヤンデいようが構わない。しかし、キティララは恐怖を強いている。
この国においては、万が一そういうキティララに突然プスッといかれて死んだとしても、心神耗弱とか心神喪失とかいって罪が軽減されしまうのだ。下手すりゃ罪にさえ問われない。ただし、被害者が幼児であるとか要人であるとかの場合はこの限りではない気がする。でも、幼児でも要人でもない、僕みたいなただのおっさんが刺し殺されても法は守ってくれない。
自衛の手段としては、「君子危うきに近寄らず」しかないのではないか。キティララを目の前にして、乗客はあたかもキティちゃんなどそこにはいないかのように振舞うが、それでは自衛にならない。露骨に嫌な顔をして、車両を変えるなり、降りるなりして、不快感を表現していいと思うのだ。
キティララ話はこのくらいにして、「満員電車で困ること」の次点は、なんだろう。それは……、満員電車そのものじゃ! ふざけんな。
くっ付きたくもないおっさんにくっ付いて朝から不快か、触れるつもりもない女性に痴漢と間違われて逮捕までされる始末。どっちに転んでもろくなもんじゃない。こんなもんがなければ日本人(特に男性)の平均寿命はもう五年は長いのではなかろうか。海外との比較が好きな日本人に言ってやりたい。
異常ですよ、こんな電車! キチガイですよ!
(了)