月刊ショータ

元電通コピーライター。ずっと自称コラムニスト。著書『広告業界という無法地帯へ ダイジョーブか、みんな?』、『カウボーイ・サマー 8000エイカーの仕事場で』

「ごまかしましょう。それではサン、ハイ!」

勤め先の廊下を歩いていると、ふいにギュインギュインギュインと音が聞こえてくる。任天堂Wii零〜月蝕の仮面〜」というゲームで、幽霊に遭遇した時の効果音にそっくりなのだが、こんな説明でわかる人はいないだろう。
確かに気持ちのいい音ではないが、これはうちの会社ではウォシュレットボタンの脇にある「消音ボタン」で出る音なのである。主に女性だろうが、おしっこのジョロジョロ音や、う○ちのポットン音をごまかすために、このギュインギュイン音をお使いになる。でも、僕はあの音を聞く度に、反射的に「あ、誰かおしっこしてはる」と思うのである。
つまり、おしっこしていることをわざわざ教えているようなものなのだ。ジョロジョロの生音でではなく、ギュインギュインの人工音で。ということは、掻き消す音であればなんでもよいのではないだろうか。ピヨピヨピヨピヨのヒヨコ音でも、ズッドーンのバズーカ音でも、ゴゴゴゴドドーンのスペースシャトル音でもいいのではなかろうか。
その日の気分で選べるようにしてはいかがだろう。
  • 「めっちゃおしっこしたいから、ピヨピヨでは足りへんわ。ウシガエルの鳴き声にしましょう」
  • 「今日はどうもユルいから、ここはひとつ乾いたハイウェイを疾駆するコルベットの音でいこうかしら」
  • 「ずっと便秘してたのに、やっと出てうれしいから、鳴り止まぬ拍手喝采の音にしてみよう」
とかとか、またひとつ一日の楽しみが増えることだろう。
それにしても、ごまかせればなんでもいいのなら、なんなら、本物よりも大きな音でジョンロジョロロロ〜! とか、ピュ〜〜〜ポッッットーン! とかブリブリブリー! でもいいということにはならないか。
僕にはあのボタンを押すということは「はい、今ワタシ音立ててウ○コシッコしてますから、もっと大きな人工音でごまかしますね、それでは、サン、ハイ!」という感じがして余計に恥ずかしいと思うのだが、どうだろうか。
そう思う僕と、なんでもいいからごまかしたいと思う女性は、羞恥心対決ではどちらに軍配が上がるのだろうか。
ちなみに、男性トイレからはギュインギュインは聞いたことない。もっと言えば、ギュインギュイン以外にも、ジョロジョロもポットンも男性トイレから、廊下にいる僕にまで聞こえたことはない。ということは、あんなモン不要なのだ。わざわざ大きな音を作り出して、自分がここで用を足していることを教えているようなものなのだ。
いくつになっても女性の行動には謎が多い。
細く見える服とか、目が大きく見えるメイクとか、僕だったら、細く見える云々ではなく、細くなるようにジムに行くなり、食事を制限するなり考えるし、目なんか大きくも小さくもならんと思っている。
寄せて上げて、そんでどやねん。僕らが興味あるのは、それを取った時なのであって、その以前にどう細工しようが知ったことではない。商品でいえば、包装が華美であることと同様なわけで、「立派やね」とは思っても、「せやからどないしてん」なのである。
仮に、おしっこ音を人工の音で糊塗することを、1ギュインとする。
【1ギュイングループ】
  • ・目の周りにもっと大きな黒を塗って大きく見せる。
  • ・コーヒーに砂糖も入れないくせに、コラーゲンの粉末(みたいな気持ち悪いモン)は入れる。
  • ・靴底に敷きたくなるくらいフッカフカのパッドを装備したブラをする。
こんなところだろうか。
【〜5ギュイングループ】
  • ・Yゾーンのみならず、Iゾーンまで毛の処理をする。僕なら、病気でやむを得ない事情でもない限り、恥ずかしくてゴメンだ。
  • ・Iゾーンのみならず、Oゾーンまで処理する。なんのことやらわからない男性諸氏のために説明すると、Iゾーンはあそこの両サイド。Oゾーンとは黄門さまの周辺である。ドラゴンアッシュ降谷建志が「KJ」と改名したそうだが、これからのKJは「Koumon wo Jomou suru」ことだ。KYの次に来る言葉だから覚えておくこと。
こういうことにさせてもらおう。
【〜10ギュイングループ】
こうなってしまう。
みなさん、くれぐれも気をつけましょうね。
何を恥ずかしがるべきなのか、物事の本質を見つめましょう。
(了)