月刊ショータ

元電通コピーライター。ずっと自称コラムニスト。2003年より書いていた月イチコラム「月刊ショータ http://monthly-shota.jp 」をhatenaに転載しました。そのため、一部お見苦しい点があることをご容赦ください。

「声に出して読みたいTとKの話」

今回の話は、男性ならわかりきっていることなので、興味のない方は読まなくても結構です。主に女性にとって有益な情報満載でお送りしますので、女性は可能であれば、おうちで、または会社で、声に出して読んでいただきたいと思っております。
女性の中には、男性に対して「股間にあんなものが付いていてスポーツの時とか邪魔じゃないの?」という疑問をお持ちの方もおられることだろう。そういう疑問をたまに見聞する。
それにお答えすると、あなた方女性が普段何気なく、いやかなりの至近距離で目にしているチ○コの状態のままでは、確かに邪魔である。しかし、通常の生活の中では、全く邪魔にならないくらいコンパクトに収納されているのである。コンバーティブルかつポータブル。ポケットに入るフェレットくらい邪魔にならないとお考えください。たまに居場所が気になるくらいです。
ただし、収納されている時のチ○コはあまり見られたくはないもので、要は女性がスッピンの顔を見せてくれないのと同じと考えていい。
男性に対する侮蔑の言葉で、最も効果が高いものは「フニャチン」である。デブよりもハゲよりチビよりもビンボーよりも、最も深い傷を残す言葉がフニャチンである、ということは良好な男女関係を継続するためには知っておいて損はない。
女性の性的な劣等としては、ペチャパイという言葉があるが、それすらフニャチンの殺傷力には及ばない。パイに関しては、ペチャが好きという人も少なからずいるし、巨乳が必ずしもよいとは限らない。思春期の女性の中にはデカパイを気にして猫背で過ごす人がいるし、「初めて会う男の人の視線が必ずチラッと胸にいくのが気になる」と言う人を実際に知っている。
男にとって性的な劣等というのは最も根深いコンプレックスなのだ。繰り返すが、ティンがフニャであることこそが、「仕事ができない」よりも「足が遅い」よりも「牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする」よりも、男としてダメな条件なのである。
逆に言えば、仕事ができなかろうと、車の運転が下手であろうと、ティンさえ元気なら、周囲から一目置かれるということになる。うーん、実社会ではそれもどうかと思うが、理論上はそういうことになる。
ここで、実際に声に出して読んでくれている生真面目な女性のために、ティンがフニャでフニャチンとはあまりにもあんまりなので、フニャTとしよう。
そうすることにより、フニャチンという救いようもない言葉が、あたかも「ピタT」とか「ヒロT(関西のFMラジオの有名なDJ)」みたいなクールな装いとなること請け合いだ。
世の男性が、いかにフニャT克服に必死かという証左は、雑誌やスポーツ誌の広告を見れば明らかである。「男として生涯現役であるために」とか「男の自信を回復」などという勇ましいコピーと共に、精力剤やインポ薬の紹介がしてある。包茎手術の広告も、あの有名な「タートルネックに頭を包まれた男の人」のビジュアルで、僕のおそらく中学生くらいの時から変わることなく掲載されている。
そろそろなにがしかの広告賞でも受賞して然るべきだと思うのだが。
電通賞でもあげて成仏させてやらなくては、あれを制作しているデザイナーが気の毒である。
クライアントに呼ばれて「そろそろビジュアルが古くなってきたから、新しくしたい」と言われてスタッフは色めきたつ。実は、企画レベルではタートルネック案の他にも、海苔がデカ過ぎるおにぎりとか、オレンジ色のビニールがなかなか剥けない魚肉ソーセージとかの新案が長年寝かされているのだ。
しかし、それでもなお、クライアントの意向は「タートルネックは据え置き」で、その理由は「今年七〇になる会長が『わかりやすい』とお気に入り」だからだ。結局、デザイナーは今時のタートルネックと今時のモデルを探して、同じビジュアルを制作する。撮影の際には、「タートルネックの長さが短い」だの「実際はそんだけ頭が出ていれば、そこそこ問題ない」などと細かい調整が必要だ。
それでもわからないニュアンスは、ウン十年前に担当していて、現在は別の仕事をしている前任者に電話で確認したりする。
  • 「えー、どれくらい被ってたらビンゴなんですかね?」
  • 「う〜ん、私が担当してた頃の包茎と、最近の包茎は若干事情が違ってる可能性はあるんだけど、まぁ、テポドンの発射事件以降、あまり頭の部分を多く見せ過ぎると『核弾頭を思い起こさせる』っていうクレームが来る怖れはあるよね」
などと、細かい気遣いまで教授してくれたりする。
本当は、男性モデルはスキンヘッドの人を起用したいという目論見もあるのだが、実際に試してみると卑猥さが度を越して雑誌社から掲載を断られることになりそうだから、結局、よりいつもと同じ感じで完成。
完全にルーティンと化し、この作業はその会社の新入社員の登竜門となる。これを一人でこなせば、彼も文字通り「ひと皮むけた男」になる。
包KとフニャTは直接には関係ないので脱線してしまったが、人間生きていればフニャTな夜もある。だから、たとえあなたのパートナーが偶然フニャTな夜であっても、それを口にしてはいけない。
いや、口にするというのはそういう意味ではない。
もしも、フニャTをフニャT呼ばわりしようものなら、「男は『する機械』か!」、「できない男は『壊れた機械』なのか!」、「辞任しろ、辞任!」という非難がゴーゴーと吹き荒れても、それは仕方ないというものなのである。
そういう時こそ、優しく「わぁー、こんなの初めて見たぁ。フェレットみたーい」とか言うと、あなたの女性としての株がストップ高を記録するのである。
またひとつ、おりこうさんになりましたね。
(了)