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月刊ショータ

元電通コピーライター。ずっと自称コラムニスト。2003年より書いていた月イチコラム「月刊ショータ http://monthly-shota.jp 」をhatenaに転載しました。そのため、一部お見苦しい点があることをご容赦ください。

「時間一杯気持ちいいこと」

column
女性に「自分の彼氏や旦那が、風俗に行く人だったらどうする?」と訊いてみると、答えは二方向に分かれる。「素人と浮気されるくらいなら風俗に行くほうがまし」という穏やかな人と、「絶対イヤ! 二度とアタシ触らないでって感じ」というキビシイ人と。
前者のタイプの女性には、僕は「おー、そうおっしゃっていただけますか」などと、肩でも叩きたくなる気分になる。まるで僕が「風俗に行く男代表」であるかのごとく。
実際は、行かないのにね。僕自身は、「この金も時間も労力もかかってる体を、なんでわけのわからん女に触らせなくちゃいけないんだ。せめて金くれ!」くらいに思っている。
後者のタイプは、やっぱり僕が「風俗に行く男代表」であるかのように、キッと睨んで、ちょっと僕との距離を離したりする。
待て待てぃ、わしちゃういうねん。それでなくても触らせてくれやしないくせに、なにを早とちりしとるか。
まぁ、その女性の気持ちもわからんではないが、そこまで嫌悪感を露にされると、僕はやはり「風俗に行く男代表」になり代わって弁護したくもなる。
そもそも「お前ら、自分のこと棚に上げて風俗バッシングばかりしやがって、何様のつもりか」、と。
風俗店にまつわる諸々の要素をブレイクダウンして考えると、要は「欲望の充足とそのサービスへの対価」ということだ。ここでは、欲望が性的なそれであり、サービスがあぅ〜あうぅ〜だ、というだけのことだ。
それは消費活動のごく基礎的なことで、誰でもそうやって生活を満たしている。バーゲン時期の朝にデパートの前を通ったり、オープンしたてのショッピング施設を通りがかれば、行列を作っている大半は女性だ。昼間っからカフェやレストランに並んでいるのも、大概女性だ。
僕は、メシのために並ぶという行為が大嫌いで、目当ての店に行列があれば、すぐさま別の店に方向転換する。「配給制じゃあるまいし、そんな浅ましいマネできるかい!」と思うのだ。
食欲という欲を満足させるために行列を作ることにみっともなさを感じない神経を僕は疑う。僕からすれば、これは風俗の待合室と何も変わらない。順番待ちで、言わばベルトコンベイヤー式で、欲望処理に廻されていくわけだ。並びつつもメニューを吟味して、サーモンのカルパッチョやらチーズフォンデュやら検討している姿は、待合室でいつものミナちゃんでいこうか、それとも新顔のアイリ嬢でイクべきか悩むのと一緒ではないだろうか。
先日、僕は珍しくやや洒落たマッサージ店に行った。エステとマッサージ半々みたいな店で、やや照れくさかった。客も店員も女性ばかりだ。初めにコースと使用するオイルを選ばされる。各店員の名前が壁に貼ってあり、「ご指名お待ちしています」とのこと。やがて個室に通されるとすぐにアラブの王子様みたいなガウンを着せられて、あとは時間一杯気持ちいいことされる。
あぅ〜あうぅ〜で五〇分はあっという間に過ぎていった。
ちなみに僕は頭皮と肩のコースだったが、全身コースは裸にされて、紙のパンツみたいなものを履かされるということを後で知った。僕はそっちを選ばなくてよかったと安堵した。
もしもバリリッといってしまったらどうするのだ。
もうお気付きだと思うが、風俗店と基本的仕組みは全く同じである。
そういう気持ちいいサービスを女性はいつも受けておいて、さらに物欲や食欲を満たすために行列を作る浅ましさは厭うことなく、男性の性風俗通いは糾弾しなさる。
そりゃあ、ちょいとおかしかぁないですかぁー!
結局、欲望には貴賎というものが明確にあって、食欲、睡眠欲、性欲というキャスト(カースト)制度の下、我々は社会生活を送っている。さらに言えば、物欲などという人間の生理的欲求に属さないものまでが、性欲の上位に置かれていて、これは資本主義経済における欺瞞というか、マヤカシである。
美食家というのが非難の対象になることは少ないし、「趣味:寝ること」なんて堂々という人は微笑ましく思われる。それなのに、SM愛好家であるとか、まさか「趣味:オナニー」とは自分のプロフィールには書けない空気がある。いや、空気どころじゃないな。
言っておくが、「趣味:オナニー」などというのは男性であれば当ったり前のことなので、書ける空気があったとしてもわざわざ書かないぞ。
その辺を女性は全く理解していない。理解するべきである。国連が動いてでも理解促進をお願いしたい。ユネスコでもいい。アムネスティ・インターナショナルでも構わない。
僕は学生時代、本当に就職先がなかったらヤクザになりたいとふと思ったりもした。
そして、裏ビデオ制作二課に配属希望を出そうと思っていた。今から思えば、良かったのやら悪かったのやら……。
(了)