月刊ショータ

元電通コピーライター。ずっと自称コラムニスト。著書『広告業界という無法地帯へ ダイジョーブか、みんな?』、『カウボーイ・サマー 8000エイカーの仕事場で』

「人の悩みの七〇パーセントは、筋肉によって解決できる」

近所にたとえば「鈴木医院 歯科 肛門科」という病院があったら行きたくないだろうな、と思う。
  • 鈴木先生: あーここですねぇ。切れてますよ。痛いでしょ。
  • 患者: 痛いよ〜。オレが今朝う○こしてたら、プチッときてさー、痛いのなんのって。
  • 鈴木先生: 結構傷口大きいですよ。大体、お酒の飲み過ぎだって良くないんですよ。ね、ここね? 触ったらわかります?
  • 患者: イタタタ! イタイって、先生! あ、先生……、いやっ、だめ。あうぅぅ〜。
  • という、おっさんの切ない吐息がカーテンの向こうから聞こえてきたりして、しばらくの後に……、
  • 鈴木先生: いやー、どうもお待たせしました。虫歯ですか? じゃあ、はい、あーんして。
いやじゃい! 絶対いやじゃ!
近いものなのに、一緒だといやなもの。実際によくあるものでいえば、「うどんとごはん」という組み合わせは、僕なら避ける。
炭水化物&炭水化物。
前にお好み焼き屋に入ったら、隣のテーブルでデブのおっさんがご飯を盛った茶碗を手に、お好み焼き&やきそばを食べていた。しかも、汗をかいて、メガネを曇らせ、完全戦闘態勢で食べていた。
炭水化物&炭水化物、アーンド炭水化物。
大阪特有なのかもしれないが、いわゆる「粉もん」にご飯とは、筋トレ野郎の僕としては、考えられないチョイスだ。僕は昼飯に行く時でも、「いかに蛋白質を摂取できるか」を基準に、店やメニューを選んでいる。
最も一生懸命やっていた頃は、プロテインだって飲んでいたし、クレアチンだって摂っていたし、アミノ酸だって噛んでいた。働くようになって、ペースダウンして、色んなことにいい加減になってきて、最近はそんなに厳密にこだわらなくなったが、やっぱりお好み焼きはご飯とは食べないな、うん。
そもそも、仕事で疲れているのに、「今日はカンベンしてくれ〜」と毎回思っているのに、それでもジムに行ってしまうのは、僕は「健全な肉体には、健全な魂が宿る」と帝国軍人の如く信じているからだ。
逆に言えば、「デブの肉体には、デブの魂が」と、西海岸のアメリカ人の如く考えている。
会議でデブがいい発言をしても、「ほーなるほど。……でも、デブ、デブ」。デブがゴミを拾ってくれていても、「いい人だなぁ。デブだけど」と思ってしまう、イケナイ自分がいる。いかん、いかん。
しかし、よく考えると青春時代にモテなかったトラウマが「せめてデブってはいけない」と、僕の中で強く警鐘を鳴らし続けているのだ。
もっと遡れば、『きん肉マン』や『北斗の拳』を読んで育ったために、「大人はみんな筋肉隆々になるものなのだ」と刷り込まれていたフシもある。『北斗の拳』では、すぐに殺されてしまう市井の村人も、結構いい体していた。幼心に僕は「普通の村人でいいから、ああいう体になりたい」と思っていた。
一般に、「人の悩みの七〇パーセントは、筋肉によって解決できる」と言われている。
……か、どうかは知らない。僕は個人的にそう考えている。
シワでも、弛みでも、肩凝りでも、早漏でも、筋肉によって解消できる部分というのは確実にあるのだ。PC筋というのを鍛えることによって、アソコの具合がパワーアップする、というのは純粋な科学だし。
もしかしたら、アメリカ的に考えれば、結婚にも出世にも関係はないとは言い切れない。応用すれば、貧困も、ハゲも、さらには引きこもりだって、ビジネススキルの乏しさだって克服できるかもしれないじゃないか。
だけど、僕の場合の問題は、仕事をテキトーに切り上げてジムに行ってしまうことだろう。そして、次の日疲れて寝坊することだろうな、きっと。
まぁ、男のマッチョ願望ってのは、女性にとっては痩身とかダイエットとかに等しいのだろうけど、一体「○○で痩せる」とかって食品や器具にこれまでどれくらいのお金が遣われてきたのだろう。
それを考えると、人間ってつくづく愚かだと思う。
それから、英語ね。「何気なく聞いているだけで自然と!」みたいなヤツ。すっごいよな。僕の小さい頃から連綿と存在している。僕個人の見解では、語学ってものもチョビチョビ漸進しかありえなくて、「ある程度蓄積していけば、あとは自ずと喋りだす」みたいな不思議な現象はないと考えている。
充電じゃないんだから。ピカッと光が青に変わればOK、なんてもんではない。
ドローンと目の前に悪魔が現れて、
「お前の望みを叶えてやろう。金か? 女か? 高級車か? 豪邸か? お?」
と訊いてきたら、僕なら
「えーと、広背筋をもっと下さい。あ、あと三角筋ももう少し。そんで、できれば僧坊筋も……」
と、このささやかな望みを聞いてもらおう。
(了)
補遺(気になっちゃったあなたへ):PC筋というのは、タマと肛門の間の部位、つまり女性でいう「蟻の門渡り」(こんなんでわかるかい!)にある筋肉らしいです。鍛え方は、おしっこを途中で止める要領で、ギュッギュとするそうなんだが、これが難しくて鍛錬が必要とか。
そこが発達すると、男性はより立ち、より持ち、より飛ぶとのこと。
『Men's Health』という雑誌に書いてあった。
女性は知らん。「女性はおしっこを途中で止められない」というまことしやかな噂を聞いたことがある。本当だろうか?
ついでに、「石田ゆり子はおしっことかう○ことかしない」という、かなり信憑性の高い業界筋からの噂も聞いたことがある。本当らしい。
とにかく、さあ、あなたもレッツ・トライ!
注:実際におしっこを出す必要はありません。