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月刊ショータ

元電通コピーライター。ずっと自称コラムニスト。2003年より書いていた月イチコラム「月刊ショータ http://monthly-shota.jp 」をhatenaに転載しました。そのため、一部お見苦しい点があることをご容赦ください。

拙著の「はじめに」を転載します

拙著『広告業界という無法地帯へ ダイジョーブか、みんな?』が刊行され、おかげさまでまずまずの評価をいただいています。

売上ランキングのどこで1位とか、それはひとまず措いて、読んでくださった人が
「一気読みでした」
「せつない気持ちになって、ちょっと泣きそうになります」
「デザイナーは是非読んでほしい~! 読みやすく、面白く、楽しんで読めました」
広告業界と言わず幅広く若手の人に読んでもらいたい内容」
「ぶつける先のない怒り、仲間が疲弊していくのをどうすることもできない無力感。それを代弁して頂いた気がする」
「うんうん頷いたり、笑ったり、戦慄したりしながら読みました。粋でカッコよく、優しくて気持ちのいい本」
「人情味のあるじーんとくる内容」
「日本中の津々浦々まで届けたい」
「あらゆる産業で膝を打つ読者が多いと思う」
(以上はツイッターより)などなどのありがたい言葉を贈ってくださったのをうれしく思っております。

 

書いたからには読んでいただかないことには、何もしなかったのと同じですので、ここに「はじめに」の項を公開しておきます。

--------- はじめに ---------

私は二〇〇一年から十五年弱の間、電通に在籍して働いていた。主にコピーライターとして業務にあたっていたが、広告の文面を考案したり、テレビCMを企画するのみでなく、街頭イベントの企画、懸賞キャンペーンの企画運営、海外展示会ブースのプロデュースなど様々な仕事に取り組んだ。電車の発車メロディーの制作もした。

世間に誇れるような仕事は残していないのだけれど、電通社員では唯一「コラムニスト」という肩書を名刺に載せていて、どこの雑誌でも新聞でもなく、「月刊ショータ」という自分のウェブサイトに二〇〇三年から月イチでしょーもないコラムを書いていた。公私混同の肩書を許すとは、寛容な会社であった。

やがて、私が四〇才を目前に退職したのち、新入社員の自殺が労災認定されて以降、長時間労働の問題がメディアによって照らし出された。二〇一六年一〇月に私が書いたコラム「広告業界という無法地帯へ」が異様な反響を見せた。

私が入社する十年前にもあった若手社員の自殺も含め、電通の企業としての体質が問題視される中、私がそのコラムを書いた理由は、「広告業界外の人が、いかに問題の大局を見ることができないでいるか」ということに歯痒さを感じたからである。

少しでも電通に肩入れをするような文言を書けば、「電通擁護!」、「こいつは電通からカネをもらっているに違いない!」、「世論操作のための回し者!」などとあらぬことを言われる現代のネット社会において、少々の勇気がいるコラムではあったのだが、報道の着眼点と電通の会社としての対応の双方に目に余る部分があったので公開した。結果、電通及び電通以外の広告関係者、その他の業界で働く人たちから概ね賛意が寄せられ、胸を撫で下ろす思いであった。

この本は一本のコラムだけでは語り切れない、電通という巨大企業の現場と、広告業界の歪なところを、二十三本のコラムとして書き綴ったものである。一部は「月刊ショータ」に書いた過去のコラムを加筆修正したものである。

第一章では、普段は表に登場することが少ないため、世間からはおそらくミステリアスに思われているであろう、電通という企業について書いた。

第二章は、広告業界の内側で今日も巻き起こっている、バカバカしい実態を描写する。第三章は、広告業界とそれ以外のビジネス社会にも共通する、どこかピントを外した日本人の働き方について指摘してみた。第四章は、働く人に少しは役に立つことを書きたいと思ったので、ご参考までにどうぞ……。

所謂「暴露本」を期待される読者の方には、購入をおすすめしない。

電通一社を叩いて何かが解決する、改善されるならそうしよう。しかし、現実はそうではない。電通を始めとした日本中の広告会社、クライアント企業、制作会社など、全ての関係者が、一度立ち止まって己を顧みる時だと思う。

そして、もちろん、この問題がここまで大きな関心を得たのは、電通という見えてこない巨躯、自殺した彼女の華やかな経歴と美貌以外にも、日本社会で働く誰もが突き付けられる課題を孕んでいたからであろう。

私に対する「こいつ、どんだけ電通に洗脳されているんだw」という批判をネットで目にして、私は鼻で笑った後にふと、「多少そうかも」と自身を振り返ることがあった。若い時に初めて入社した会社で教育され、その世界しか経験しないと、確かに染まっていってしまう部分はあったと思う。

そんな自省も込めて、広告業界を一歩離れた場所から眺めてみたのが本書である。

私は、「元電通」であることを売りにしながら、古巣に後ろ足で砂をかけるような者にはなりたくないと願っている。電通には恩もあれば、感謝の気持ちもある。それがあるからこそ、鈍らな刃も向けたいと思う。

広告業界という無法地帯へ ダイジョーブか、みんな?』というタイトルは、この社会が異常性を帯びていることに気が付き始めた皆さんに向けて、私自身が付けたものだ。

笑覧いただき、一度立ち止まる機会になれば、著者として幸いである。

 

以上です。

笑えて泣けて、生きていこうと思えるコラム集です。お一人でも多くの「ダイジョーブじゃないかも」と思っている方の手に取られるといいです。

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前田将多著『広告業界という無法地帯へ ダイジョーブか、みんな?』(毎日新聞出版

https://www.amazon.co.jp/dp/4620324396