月刊ショータ

元電通コピーライター。ずっと自称コラムニスト。著書『広告業界という無法地帯へ ダイジョーブか、みんな?』、『カウボーイ・サマー 8000エイカーの仕事場で』

「なんだか泣けた夜の話」

45才になりました。信じられません。 成人して四半世紀、25才で会社に入ったから、社会人20年ということになる。人生50年ならもう晩年を迎えているのに、大したことはしていない。 同じ45才で亡くなった著名人たちを挙げると、クイーンのフレディー・マーキ…

「つくし狩り」

今回はnoteに書きました。 特に見どころのないエロ小説です。どうぞ… note.com

「酔っ払いが大嫌い、だった」

僕が酒を飲みはじめたのは遅くて、二十代も後半になってからだ。 両親と男ばかり三兄弟の家族なのに、冷蔵庫にヨーグルトやプリンはあってもビールはないような家庭だった。 若いうちに何度か飲酒を試してみたけど、おいしいとも思えないし、心臓バクバクす…

「ブラックライブスがマターすると、レッドスキンはどうしたらいいのか」

「もう人類はムリなんじゃないか」と思ってしまうような夏がつづいている。 ほとんど遊びにも行けないのに、いやになるくらい暑いだけで、冬にはじまったウイルスがしぶとくて、世界中が猖獗の地となり、香港で自由を求める人たちは法改正による恐怖に意気消…

「あらゆるものが『生きろ』と言うが」

死について考えるとき、それが身近な誰の死であっても悲しいものだろうし、なかんずく自分の死であるなら恐れない人はいない。死ぬのはなるべく先延ばしにしたいものだ。 ALS(筋萎縮性側索硬化症)に苦しむ女性が、医師二名に安楽死を依頼し、それに応えた…

『カウボーイ・サマー』(第1章無料公開)⑥最終回

DAY 6「陽気な牧場主」 目覚めると、目の前に牛の大群がいて慄然とした。朝靄もやにかすむ午前六時、牛たちは水を飲みに来たのだろう。 まだ誰も起きていないから、僕は読書をして待った。本を読む余裕もないほど毎日いろいろあったから、本を開くのは行きの…

『カウボーイ・サマー』(第1章無料公開)⑤

※DAY 5も、DAY 4につづいて殺生があります。閲覧注意ですね…。 DAY 5「命を扱う厳しさと、ジェイクの小さな夢」 晴れているが風の強い日。日曜日だから、仕事は遅めの開始とジェイクから伝えられていたのに、僕はまた六時半に目覚めてしまった。 馬とポニー…

『カウボーイ・サマー』(第1章無料公開)④

※このDAY 4は残酷な描写を含みますので、閲覧注意でお願いします。しかし、都市生活者の視点からは残酷でしょうが、牧場では当たり前のことなんですね…。 DAY 4 「牛の解体」 ミーが死んだ。 その日、僕はディーンの家の荷物整理を手伝って、不要な段ボール…

『カウボーイ・サマー』(第1章無料公開)③

DAY 3 「ブランディング」 三日目にして、ビッグデイを迎えた。ブランディングである。ブライアンとチャドという親子が経営する牧場へ、牛の焼印捺しの作業を手伝いに行くのだ。 焼印をブランド、それを捺す作業をブランディングと呼ぶが、広告業界で言う企…

『カウボーイ・サマー』(第1章無料公開)②

DAY 2 「カウボーイって今でもいるんですか?」 朝六時半に自然と目が覚めた。会社員時代にはまずなかったことだ。 僕は電通という広告会社のコピーライターだった。コピーを書くだけでなく、イヴェントをプロデュースしたり、ブランド・コンサルタントのよ…

『カウボーイ・サマー』(第1章無料公開)①

私、前田将多のカウボーイの旅から5年になる夏、『カウボーイ・サマー』発売から3年になる記念に、第1章を何回かに分けて無料公開します。 旅した気分で、ゆっくりおたのしみください。 ------------------------------------------------------------------…

「留学なんて、しにくくていいのだ」

新型ウイルス禍により学校教育が中断している現状を鑑み、「9月入学」が議論されている。 日経新聞が知事41人から回答を得たアンケートによると、6割が賛意を示したという。 新型コロナ:9月入学、知事の6割「賛成」 グローバル化進展期待 :日本経済新聞 産…

「なにかを嫌うことは自由だろう」

先々月、3月11日にライターの田中泰延さん、アートディレクターの上田豪さんとの酔っ払い鼎談の第3弾『僕たちはおかげさまでここにいる』を行なった。まだ外出自粛要請もされていない呑気な世の中であった……(はやく「大変だったね」と笑えるようになりま…

「自分以上に信じたい人はいますか?」

ケニー・ロジャースが2020年3月20日に、81才で老衰のため亡くなった。 日本では知っている人は少ないかもしれないが、アメリカの国民的スターと呼んでも差し支えないカントリー歌手であった。わかりやすい例を挙げると、1985年に”U.S.A. for Africa”というア…

「食っていく、という話をしてきた」(後篇)

映画カフェバー「ワイルドバンチ」(大阪市北区長柄中1丁目4−7)で毎月開催されているトークイベント『食っていく、という話をしよう』の第7回に呼ばれて、90分お話ししてきた。 当日お話ししたことをベースに、青春記のようなかたちでまとめたのが本稿で…

「食っていく、という話をしてきた」(前篇)

映画カフェバー「ワイルドバンチ」(大阪市北区長柄中1丁目4−7)で毎月開催されているトークイベント『食っていく、という話をしよう』の第7回に呼ばれて、90分お話ししてきた。コロナウィルス騒動にもめげずに来てくださった皆さん、ありがとうございま…

「権威に抗うことを生き甲斐にしているやつら」

「泣く子と地頭には勝てない」ということわざがあるが、僕が反論したり言い争いをしたりしないように心がけている人間が二種類いて、そのひとつは警察官である。人並みに交通違反で警官に止められたことはあるが、そういう時も言い逃れや言い訳を試みないこ…

「誰もつくっていないのに、誰かがつくったかのようなルール」

長いこと日本社会を眺めていると、多くの人が感じているであろう息苦しさの一因はこういうところにあるのではないか、と考える。 それは、日本特有の「ただの慣習が、あたかもルールであるかのように固定化する現象」である。サラリーマン文化に顕著だ。 た…

「日本を救うでっかいハナシ」

先月、シアトル・マリナーズの球場でメジャーリーグの野球を観戦した際、ホットドッグとフレンチフライズ(ポテト)とビールを買ったら、27ドル50セントした。1ドル=110円として計算すると、3025円である。 それだけで3千円を超えているのである。 もちろ…

「なかなかしんどいワンダーランドへの旅③」

トレイルに入って3日目の朝、岳ちゃんは残りの三人よりも1時間ほど早く、8時半にキャンプ地を出て行った。「トレイルから逸れたところにクレセント・レイクという湖があって、そこが絶景らしいんです。そこで竿を振るのが、僕の今回の一番の希望なんです…

「なかなかしんどいワンダーランドへの旅②」

その晩は、疲れ果てて8時には寝て、狭いテントの中でもすぐに眠りに落ち、7時間ほど一気に眠った。 激しい雨音に目が覚めて、腕時計を見ると3時すぎだった。 車中泊をした前の晩の予報がヘヴィーレインだったが、今夜の方がよほどヘヴィーだ。遠くで雷鳴…

「なかなかしんどいワンダーランドへの旅①」

またしんどい旅をしてきた。 しんどかった旅をもう一度反芻して旅行記コラムを書くのもしんどいのだが、自分と、一緒に行った友人たちがのちに楽しめるように書くことにしよう。 そして、毎度そうなのだが、こんな外国の山奥に行きたくもないし、行く装備も…

「クレイジーでビューティフルな彼女の歌」

カントリーソングの話をしたい。たまにやるシリーズである。たとえば過去にはこんなのも。 monthly-shota.hatenablog.com 誤解を恐れずに言うと、僕が女の人を人間と認めたのはいつ頃だったろうか。 少年時代には、僕は女の人があまり好きではなくて、なるべ…

「ボカシだらけのニッポンに」

先月、参議院議員選挙が終わった。票を投じるにあたり、どういう日本になってほしいか、各人が考えたことだと思う。僕自身も、なんの権限もないのに、大統領にでもなったつもりでつらつら考えることはあるので、我が国、我が国民の「そういうの、やめといた…

「2019年上半期、凄味のある4冊」

今年も半分終わってしまった、ということで、ここ半年で読んでおもしろかった本を紹介することにしよう。僕の「読書感想文」程度の、とっ散らかったものです。 ■藤沢周 著『界』(文春文庫) 「文豪」という言葉を思うとき、僕は現代の文豪とは藤沢周さんな…

「パンツの中のタイガーが、ネコになったら」

「やっぱり君たちはなんにもわかっていない」とエラソーに思うことがあったので、この際エラソーに書いてしまおう。 それは、みんな大好き、チン○の話である。 先日、飲み会で女性と話していたところ、彼氏がEDなのだという。言わずと知れた、勃起不全である…

「『抱いてください』への長き道のり」

先月はじめにまた上田豪さんと田中泰延さんと、ヒマナイヌスタジオ神田より、飲みながらのトーク配信を行った。 www.youtube.com 一応、テーマらしきものを設定して、「僕たちだってこんなことで悩んでる」ということで事前にお悩み募集もした。たくさんのメ…

「面接にはオールバックで行きなさい」

僕が就職活動をしていたのは二〇〇〇年の春で、氷河期と呼ばれる期間(一九九三~二〇〇五年)の中でも、有効求人倍率で見れば最悪の数値を叩き出した、超がつく氷河期であった。 そういう時節に難関といわれる企業に入社したのだからエラいだろう、と自慢し…

「カウボーイは、よく眠る」

英語で、テントやタープ(屋根として張る布)を使わずに野宿することを「カウボーイ・キャンピング」という。 十九世紀の後半、アメリカで大陸横断鉄道が東部から西部へと敷設されていくと、肉牛を流通させるために、カウボーイたちは牛の大群を馬で追って、…

「誰もしたくない隣国のハナシ」

その方は、共同通信社から社費留学でフランスの大学に在籍して語学を身につけ、その後パリ支局長を務めて、新聞社に移籍。記者活動を通じて、日本のピューリッツァー賞ともいえるボーン・上田記念国際記者賞を受賞し、パリ在住二十年以上の実績を評価されて…