月刊ショータ

元電通コピーライター。ずっと自称コラムニスト。2003年より書いていた月イチコラム「月刊ショータ http://monthly-shota.jp 」をhatenaに転載しました。そのため、一部お見苦しい点があることをご容赦ください。

おっさんたちのスタンド・バイ・ミー③

ロザリー・レイクを後にすると、スイッチバック(九十九折のこと)で丘を下った。昨日はほぼずっと登りだったから、はじめて下りの筋肉を使ったような気がする。 ほどなくして、昨日の本来の目的地だったシャドウ・レイクに出た。このトレイルでは次々と湖に…

「おっさんたちのスタンド・バイ・ミー②」

マンモス・レイクスではまずウェルカム・センターに立ち寄って、予約してあったジョン・ミューア・トレイル(JMT)の入山許可証を取得しなくてはならない。ログハウス風の建物の中に、記念品や土産物のストアとインフォ・カウンターが一緒になってある。 …

「おっさんたちのスタンド・バイ・ミー①」

カリフォルニア州には「ジョン・ミューア・トレイル(JMT)」という有名なハイキング・コースがある。ハイキングと書くと、サンドウィッチでも携えてテクテクと歩く牧歌的なイメージだが、ここはウィルダネス(原生自然)の中を一本伸びるトレイルを歩く…

「寅よ、ちょっとは役に立たんかい」

二年前の夏、僕がカナダでカウボーイをしていたある日、日本の主人(妻)からメッセージが来た。 「猫飼ってもいい?」 僕は猫好きで、小さい頃から猫を何匹も飼ってきたけど、主人は犬好きで、実家で犬を飼ってきた。だから意外であった。余談だが、人間の…

「またやるんですか、『盗聴法』という言い換え」

2015年の夏、安全保障法制の施行に関連して、日本中が喧しかったはずである。はずである、というのは当時、私はカナダの牧場でカウボーイとして働いていたので、そこの母屋にある弱いワイファイにスマホをつないでニュースを閲覧する以外に状況を知る術がな…

拙著の「はじめに」を転載します

拙著『広告業界という無法地帯へ ダイジョーブか、みんな?』が刊行され、おかげさまでまずまずの評価をいただいています。 売上ランキングのどこで1位とか、それはひとまず措いて、読んでくださった人が「一気読みでした」「せつない気持ちになって、ちょ…

「小さな本屋さんと僕と電通のかかわり」

電通関西支社には昔から出入りされている書店がある。まや書店という。 店舗は大阪は淀屋橋の三井物産ビルの地下にあって、僕はそこにも行ったことあるのだけど、五人も入ったら一杯なくらい小さな本屋さんだ。 主人のおじいちゃんがいつも痩せた体で、雑誌…

「トランプ大統領就任演説に見るアメリカ人の限界」

ドナルド・トランプ新大統領の就任演説で、何をどのように言っているのか、全文を読んでみた。 www.huffingtonpost.jp www.newsweekjapan.jp 演説における言葉遣いや品位を問う声もあったが、まぁ、なんと言うか、間違ったことは言っていないかもしれないが…

「電通はなくならない。自由がまたひとつ、なくなる」

去る十二月二十三日に、電通が二〇一六年の「ブラック企業大賞」に選ばれ、二十六日には厚生労働省の長時間労働削減推進本部(本部長・塩崎恭久厚労省)が、過労死ゼロを目指す緊急対策を公表した。 ・企業に対し、実働時間と自己申告時間の乖離がないよう実…

「不寛容という見えない敵に」

しんどい一ヶ月であった。 先月書いたコラム『広告業界という無法地帯へ』への反響として、メディア各社から取材が押し寄せた。新聞社二社、テレビ局四社、雑誌社二社、インターネット系二社など。ラジオ番組でも僕の知らないところで紹介されていたようだ。…

「広告業界という無法地帯へ」

電通の新入社員が自殺して、超過勤務による労災が認定されたという出来事が、メディアで連日取り上げられている。若くして人生を諦めてしまった女性社員の無念と、ご家族の心痛と、友人や同僚たちの動揺を思うと、僕の心も穏やかではいられない。 僕は二〇〇…

「アメリカはどこにあるんだ」

誰しも、使命感を持って続けていることがあるのではないだろうか。子供を育てることもそうだし、仕事にそれを感じて取り組んでいる人もいるだろうし、地域や業界や趣味で、何かの団体に所属することもそれに通じるものがあるだろう。 僕にとってそれはカント…

「ウヨクに言いたい。サヨクに訊きたい」

「テレビが報じない!」、「言論封殺だ!」と嘆きながら、ネットで思い切り自由に発言している意見がよく聞こえてくる。 「いい時代のいい国に生まれたじゃないか、キミたち」と、僕は思って眺めている。 現代のテレビ放送のメジャー局がどういう人々に向け…

「ウトゥクシクモナイシ、カワイクモナイクセニ」

サラリーマンの仕事をドライヴするものは「怒られたくない」という動機であると喝破したのは、元博報堂のネットニュース編集者、中川淳一郎さんである。 広告業界のしょーもないエピソードが著書である『夢、死ね』(星海社新書 二〇一四年)に書かれていて…

「ウトゥクシク、ナリタイナ」

ある晩、もう二十三時くらいのことだ。 後輩のアートディレクター(以下、AD)が喫煙室に入ってくるなり、イライラした様子で煙草に火を点けて、大きなため息をひとつ吐いた。 「どうした?」 先輩の僕は一応声をかける。 「もうムチャクチャっすよ。ポス…

畳と茣蓙と科学的屁理屈

(前回からの続き)ようやく婚約を果たしたユウちゃんの話を聞きながら、浮かない表情の二人がいた。共に独身のアキちゃん(仮名)と滝下(仮名)である。 「どうしたら、そういうことになれるのでしょう……」 人間関係という深遠なものに対する完全な対処法…

「スタンプカードが一杯になったようなのだ」

コラムに二度登場いただいているユウちゃん(仮名)である。 初めに書いたのは、二〇一四年五月号「ルールブック、読んだか?」の中だった。その続報として、翌年六月にまた書いた。 私は、彼女のいじらしくて切ない恋の行方を静かに見守っていた。 二十九才…

Santa Monica, California

「カウボーイハットの内側に」

■「ハーブという男」篇 十五年近く勤めた広告会社を辞めて、ひと夏の間、カナダにてカウボーイをして過ごすことにした。今はもうすでに帰国して、三ヶ月が経ったところだ。 僕がお世話になったキング牧場は、ハーブという六六才(当時)の男と、その息子のケ…

「荒くれ者の端くれとして」

■「ケヴィンという男」篇 十五年近く勤めた広告会社を辞めて、ひと夏の間、カナダにてカウボーイをして過ごすことにした。今、ふた月が経ったところだ。 ケヴィンという荒くれ者カウボーイ一家の牧場に滞在して、その両親であるハーブとイーディスという夫婦…

「どーでもいいこと、よくないこと」

■「ジェイクという男」篇 十五年近く勤めた広告会社を辞めて、ひと夏の間、カナダにてカウボーイをして過ごすことにした。今、ひと月経とうというところだ。 会社は大企業だったから、知人の中には「えぇーっ、もったいない」などと言う人もいたけれど、「お…

「カッコつけろよ(続 ルールブック、読んだか?)」

およそ一年前のコラム、「ルールブック、読んだか?」の中で、僕は同僚のユウちゃん(仮名)という女性の、恋の話について書いたのだった。 月刊ショータ14年5月号: http://goo.gl/RxFKKH その後、ユウちゃんとナオトくん(知らんけど)の恋の行方はどう…

「ラブホテル村に行きたくはないのか」

以下は、信じられないような実話である。 僕の取引先に〇村さん(あえて伏せます)という方がいる。その方からのメールを携帯電話で確認すると、必ずお名前が[ラブホテル]村と表示されるのだ。その〇に入る漢字はちょっと珍しいのだが、文字化けというか、変…

心に火を。尻にも火を

広告企画制作の仕事をしていると、初対面の人などにこのように言われることがある。 「クリエイターって、ゼロから何かを生み出すんだから大変な仕事ですね」 僕は毎度こう答える。 「ゼロからじゃないですよ。商品があって、クライアントの指示があるんだか…

「ヒジがね、当たってますねん」

二年半ぶりのタイ王国。アジア太平洋地域の広告祭に参加するためだったのだが、費用は自腹で行ってきた。今回は若いデザイナー二名が同行した。二人ともアジアの外国は初めてで、うち一人は三十才にして初海外。それどころか初飛行機だったらしい。 三十まで…

「名前を付けよう」

景気が緩やかに回復していると言われているけど、テレビや新聞が「アベノミクスの効果を感じるか」などと街頭調査をすると「感じない」が大半を占めたりする。それをメディアはうれしそうに報じる。「恩恵は富裕層だけ」とか「大企業だけ」とか、批判する声…

「思惑交差点に立つ男と女」

とあるファッション雑誌編集長がフライデーされた。記事によると、こうだ。 二十三才のモデルA子さんは、若者に大人気のファッションショウへの出演を夢見ていた。有名編集長であるK氏を紹介してもらう機会を得て、会食をした。食事のあとにバーへと誘われ、…

「彼女は、死んだのだ」

こんな駅貼りポスターを目にした。人材派遣会社だったか、転職情報会社の広告で、こんなコピーが書かれていたかと思う。 「大人のあなたを変えるのは、恋と仕事です」 僕はこれを見て直感的に疑問を感じたのである。「そうかな……?」と。 いや、正直に申せば…

「十年念じよ」

僕は占いの類は信じないのだが、先日、勤め先の送別会で「ワタシ、手相が診られるんです」という女性と会話をしたので、せっかくだから僕の掌を診てもらうことにした。 彼女は僕の両手をグイッと引き寄せ、しばらく凝視したのち、いきなり、 「芸術家肌なタ…

「未来に届け、僕らの涙声」

アメリカを旅していた時のこと、オレゴン州ポートランドでとあるレザーショップに入ったところ、支払いカウンターにこのような表示、というか宣言が貼ってあった。 曰く、「私たちはどなたであってもサービスを拒絶する権利があります」。 「どなたであって…