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月刊ショータ

元電通コピーライター。ずっと自称コラムニスト。2003年より書いていた月イチコラム「月刊ショータ http://monthly-shota.jp 」をhatenaに転載しました。そのため、一部お見苦しい点があることをご容赦ください。

「スタンプカードが一杯になったようなのだ」

コラムに二度登場いただいているユウちゃん(仮名)である。 初めに書いたのは、二〇一四年五月号「ルールブック、読んだか?」の中だった。その続報として、翌年六月にまた書いた。 私は、彼女のいじらしくて切ない恋の行方を静かに見守っていた。 二十九才…

「カウボーイハットの内側に」

■「ハーブという男」篇 十五年近く勤めた広告会社を辞めて、ひと夏の間、カナダにてカウボーイをして過ごすことにした。今はもうすでに帰国して、三ヶ月が経ったところだ。 僕がお世話になったキング牧場は、ハーブという六六才(当時)の男と、その息子のケ…

「荒くれ者の端くれとして」

■「ケヴィンという男」篇 十五年近く勤めた広告会社を辞めて、ひと夏の間、カナダにてカウボーイをして過ごすことにした。今、ふた月が経ったところだ。 ケヴィンという荒くれ者カウボーイ一家の牧場に滞在して、その両親であるハーブとイーディスという夫婦…

「どーでもいいこと、よくないこと」

■「ジェイクという男」篇 十五年近く勤めた広告会社を辞めて、ひと夏の間、カナダにてカウボーイをして過ごすことにした。今、ひと月経とうというところだ。 会社は大企業だったから、知人の中には「えぇーっ、もったいない」などと言う人もいたけれど、「お…

「カッコつけろよ(続 ルールブック、読んだか?)」

およそ一年前のコラム、「ルールブック、読んだか?」の中で、僕は同僚のユウちゃん(仮名)という女性の、恋の話について書いたのだった。 月刊ショータ14年5月号: http://goo.gl/RxFKKH その後、ユウちゃんとナオトくん(知らんけど)の恋の行方はどう…

「ラブホテル村に行きたくはないのか」

以下は、信じられないような実話である。 僕の取引先に〇村さん(あえて伏せます)という方がいる。その方からのメールを携帯電話で確認すると、必ずお名前が[ラブホテル]村と表示されるのだ。その〇に入る漢字はちょっと珍しいのだが、文字化けというか、変…

心に火を。尻にも火を

広告企画制作の仕事をしていると、初対面の人などにこのように言われることがある。 「クリエイターって、ゼロから何かを生み出すんだから大変な仕事ですね」 僕は毎度こう答える。 「ゼロからじゃないですよ。商品があって、クライアントの指示があるんだか…

「ヒジがね、当たってますねん」

二年半ぶりのタイ王国。アジア太平洋地域の広告祭に参加するためだったのだが、費用は自腹で行ってきた。今回は若いデザイナー二名が同行した。二人ともアジアの外国は初めてで、うち一人は三十才にして初海外。それどころか初飛行機だったらしい。 三十まで…

「名前を付けよう」

景気が緩やかに回復していると言われているけど、テレビや新聞が「アベノミクスの効果を感じるか」などと街頭調査をすると「感じない」が大半を占めたりする。それをメディアはうれしそうに報じる。「恩恵は富裕層だけ」とか「大企業だけ」とか、批判する声…

「思惑交差点に立つ男と女」

とあるファッション雑誌編集長がフライデーされた。記事によると、こうだ。 二十三才のモデルA子さんは、若者に大人気のファッションショウへの出演を夢見ていた。有名編集長であるK氏を紹介してもらう機会を得て、会食をした。食事のあとにバーへと誘われ、…

「彼女は、死んだのだ」

こんな駅貼りポスターを目にした。人材派遣会社だったか、転職情報会社の広告で、こんなコピーが書かれていたかと思う。 「大人のあなたを変えるのは、恋と仕事です」 僕はこれを見て直感的に疑問を感じたのである。「そうかな……?」と。 いや、正直に申せば…

「十年念じよ」

僕は占いの類は信じないのだが、先日、勤め先の送別会で「ワタシ、手相が診られるんです」という女性と会話をしたので、せっかくだから僕の掌を診てもらうことにした。 彼女は僕の両手をグイッと引き寄せ、しばらく凝視したのち、いきなり、 「芸術家肌なタ…

「未来に届け、僕らの涙声」

アメリカを旅していた時のこと、オレゴン州ポートランドでとあるレザーショップに入ったところ、支払いカウンターにこのような表示、というか宣言が貼ってあった。 曰く、「私たちはどなたであってもサービスを拒絶する権利があります」。 「どなたであって…

「二〇〇〇㍍と二〇〇〇㌔の旅(シェア篇)」

4/4回 ポートランドに入ったのは、帰宅ラッシュの最中の午後五時半。高速道路は自動車で埋まっていた。 この町で、僕と旅の供である大谷さん(仮名)と滝下(仮名)は、バブル時代のOLも真っ青のショッピング三昧をすることに決めていた。それがなければ…

「二〇〇〇㍍と二〇〇〇㌔の旅(ロード篇)」

3/4回 前号の予告通り、山での「お花の摘み方」から始めよう。 僕はこれまで相当な数の山歩き関連の書物を読んできたはずである。しかし、「野ウンチの仕方」に関するちゃんとした描写は読んだことがないのであった。 いや、ウンチの仕方は想像できますわ…

「二〇〇〇㍍と二〇〇〇㌔の旅(トレイル篇)」

2/4回 カリフォルニア山岳地で、朝の涼やかな空気を吸って、コーヒーでも飲むとこれから冒険に臨む気分が高まる。二三六三メートルのスミス・ピークは標高だけを見れば大した山ではないかもしれない。しかし、ウェブサイトでは、「あまり使われないトレイ…

「二〇〇〇㍍と二〇〇〇㌔の旅(SF篇)」

1/4回 その晩僕は、山仲間であり、親友と呼んでなんの差支えもない大谷さん(仮名)をバーに呼び出し、こう問うたのだ。 「大谷さんよ、あそこにいつか行きたいねとか、いつかあれしようよ、と今まで話してきたことをね、そろそろ一つひとつ実現していか…

「ルールブック、読んだか?」

珍しく会社の先輩から昼食に誘われた。基本的には一人で考え事をしながら食べるのが好きなのだが、誘われたからには断らないようにしている。 で、ついて行ってみると部署の女性も一人来た。なんのことはない。元々、その先輩と後輩一名とその女性とで行く予…

「おばあちゃんの勲章」

祖母が亡くなった。享年九十九。これで僕の祖父母はみな冥途へと旅立ってしまった。 おばあちゃんは十年くらい前からボケが始まり、孫の僕らはおろか、最後の数年は自分の息子や嫁たちのことも認識しなくなった。だから、その次男である僕の父親が七年前に亡…

「三年ぶり(二十七度目)の思考停止」

東日本大震災から三年。テレビや新聞では特集が組まれていたけど、一瞬の盛り上がりを見せてまた静かになった。まるで十二月二十五日が過ぎたらクリスマスツリーを大急ぎで片付け、クリスマスのことは一切話さない日本特有の変わり身の早さを見るようだ。ち…

「演技する競技はスポーツか」

ソチオリンピックが終わって、なんだか「おつかれさん」感が世の中に漂っている。とはいっても、パラリンピックはこれから始まるので、奇麗事でなく、ちゃんと放送なり解説なりしてほしいなぁと思う。 前回のロンドン大会の時の英国のテレビ局が行なったパラ…

「ドラマはあるか」

今年の初めに、インドネシアからマレーシアはクアラルンプールを訪れた時のこと、僕は下着を現地調達するつもりで持って行かなかったので、街を歩きながらパンツと靴下を探していた。ショッピングモールで「無印良品」を見つけて、物品を見ていたのだが、パ…

「時を越えるもの、国境を越えるもの」

先日、東京は青山のよく行くお店で中古の茶色いブーツを発見した。そのブーツはmotoという、鳥取ベースで本池さんという革職人が作るブランドで、アメリカものほどのゴツさがなくて、革もいい色にヤレていた。サイズは2で(motoはサイズが「1/2/3」表…

「始まることもない恋の話」

カントリーゴールドという、カントリーミュージックの野外コンサートイベントが毎年開催されていて、今年でもう二十五周年だという。毎回、本国アメリカからカントリー歌手を招聘し、ファンに本場のカントリーを直に聴ける貴重な機会を与えている。僕は、実…

「人は青春にしか生きられないのだ」

高校生の頃に、映画が好きでよく劇場に行っていた。今は亡き池袋の文芸座(現在は新文芸座としてパチンコ屋のビルの一テナントとなっているという)に、旧作の映画を観に行った。現在の新文芸座で、名画が二本で一三〇〇円という。九〇年代当時は千円ではな…

「『あの夏』を語る語る」

先日、写真家の友人と後輩とカントリーバーで飲んでいる時に、僕の好きな曲がかかり、この、Garth Brooksの"That Summer"という名曲について二人に話した。なんだか僕のカントリー熱が着火してしまって、その歌詞を翻訳して二人にご紹介させてもらった。 「…

「生きていこうと思うじゃねえか」

ネットでとある情報サイトを見ていたら「スーツに合うヘアスタイル」特集があった。僕は普段スーツは着ないので関係ないのだが、そういう流行にも疎い質なので覗いてみた。 ガッカリであった。どこが「スーツに合う」のかがわからんのだ。言いたいことは色々…

「バカちんのための、インプレのインプレ」

今、僕が乗っているモーターサイクルが、購入して十年、自動車が九年経っている。今年は両方車検が来てしまう年なのだが、特段不満も、故障も、そしてお金もないので買い替えるような予定はない。ちゃんと走るし、ちゃんと曲がる。もちろんちゃんと止まる。…

「追悼 加藤則芳さん」

おそらく加藤則芳さんのお名前を知る人は、一般にはさほど多くないだろう。しかし、アウトドア、とりわけ山歩きの世界においては「ロングトレイル」という概念を日本に紹介した第一人者として知られている。世界のトレイルを歩き、それを通じて自然と人間の…

「Giを忘れるべからず in Jakarta」

①「そろそろサクラの季節だろ? 日本人はどうしてそんなにサクラが好きなんだ?」 ②「サクラの下でパーティするというのは本当なのか?」 ③「クライアントが『モダンジャパニーズなデザインに』っていうんだけど、モダンジャパニーズってなんなんだ?」 その…

「一瞬たりとも油断すべからず to Bandung」

インドネシアのジャカルタという街は、観光用にできているとは言い難い。あまり見るべきものはなく、街を歩けるような構造にもなっていない。巨大なショッピングモールばかりがあちこちに濫立していて、しかも中身は大体画一的。どこに行っても同じショップ…

「いちいち怒るべからず in Jakarta」

前号でジャカルタに滞在するにあたり、「この橋は渡るな」と忠告されて来たことを書いた。滞在ちょうど一ヶ月になるが、雨が降っていない限りは毎日橋を歩いて通勤している。今のところどうということもない。ちゃんと周りに注意してサングラスかけて早足で…

「この橋渡るべからず in Jakarta」

「ソーリー、ソーリー」 辻本清美ではない。タクシー運転手のおじさんは、空港を出てものの十分で渋滞にぶつかると申し訳なさそうに手を合わせてそう言った。 「いえ、いいんですよ。あなたのせいじゃないし」 インドネシアのジャカルタの交通事情は事前に噂…

「自分でしたいの」

二人でとんカツを食べているとして、よもやおっさん同士が「いやいやいや」とか言い合って、お互いのカツにソースをかけ合ったりはしないものだ。でもお酒はそうではないらしく、ビール瓶を取り合うおっさんと、会計の際に「今日はワタシが」「いや、ワタシ…

腰がこうとか脚がどうとか

僕は、野球というものにほとんど注意を向けずに少年時代を過ごした。当時は『キャプテン翼』の時代だったので、サッカーこそが新しく、自由で、カッコいいスポーツの代表であって、野球は「古い」「厳しい」そして「ダサい」ものであるという印象があった。…

「ピックアップマンには何かがある」

初めて訪れたバンコク。現地の仕事仲間にもらったガイドブックには「アーバンジャングル」という表現があったが、まさに都市のジャングルと言っていい混沌と猥雑さに圧倒される。街を歩いてみると、一見廃墟のようなビルのひとつひとつに人の営みがあり、野…

「※見た目上の演出です。」

数年ぶりに少し年上の友人に再会したところ、頭髪が薄くなっていた。会話の中でそこに触れていいものか迷っていると、僕の視線に気付いたのか、彼の方から切り出した。 「アタマ、禿げたでしょ」 「え、ええ」 ちょっと、どう反応していいのか困るよね……。 …

「(4+9)×2の旅 後篇」

九州自動車道という高速道路に入り、鹿児島に向かってぶっ飛ばす。山道と格闘した後は高速道路のありがたみが身に沁みてわかる。周りには車も少なく、日差しに南国の峻烈さが窺えるようになってきた。 サービスエリアで話しかけられたトラックの運転手さんが…

「(4+9)×2の旅 中篇」

愛媛県の八幡浜港を出たフェリーは、約二時間をかけて大分県臼杵港に着く。乗客は潮風を避けて客室内で思い思いに時間を過ごしている。車庫を地下とすると、船は三階建てで、僕は二階の甲板のベンチで本を読んでいた。しかし、寒くなってきたので後半は室内…

「(4+9)×2の旅 前篇」

二十七才でモーターサイクルに乗り始めて十年目になる。カワサキのバルカンドリフターであちこち旅をしてきたけれど、二〇一〇年に相棒の大谷さん(仮名)と四国をぐるっと旅してフェリーで大阪港に帰った際に、「四国と九州もフェリーでつながっている」と…

「そらぁ、ええもんつくりまっせ」

前回に引き続き、おっさんのことについて書こうと思う。ひと月にも渡って考えるなら、若い女性と、そない若くない女性のことだけを考えていたいものだが、自分の将来(もしかしたらごく近い将来)について考えるつもりで、あえておっさんについて思考を巡ら…

「おっさん的傾向と対策」

週が明けると年度が変わり、僕は入社十二年目になる。 昨夜は会社の野球チームでシーズン開幕前の飲み会をしていたのだが、知らない間に自分が若手ではなくなってしまったことに気付かされた。僕よりも先輩の四〇代の方々とテーブルについて、皿やビールなん…

「明日を信じて」

他の国のことはよく知らないから想像で書くのだが、日本には女性専門の独特な職業がある。「いるだけ」が仕事の職業だ。無礼を承知で言うが、たとえばクラブとかキャバクラのおねえさん、そしていわゆるグラビアアイドルと呼ばれる人たちがそれにあたる。 週…

「衝突を避ける。徹底的に(本論)」

今からちょうど二年前の二〇一〇年一月号のコラムで、僕はこう書いた。 「せめてこの国が、歴史の嵐の末に手元に得た憲法九条を堅持しながらも、毅然と生きていくことを望む」 僕はたまに愛国的な発言をするから、傾向的に言うと、こういうタイプの人間は憲…

「衝突を避ける。徹底的に(序章)」

年末になって、忘年会やら懇親会やらが何回かあり、いわゆるバフェ(バイキング)で食事することになった。 すると、必ず、大抵女性に「みんなのために、適当に何種類か料理を皿に持って、テーブルの真ん中に置いてくれる人」がいる。 それはちょいとありが…

「まだ怒ってるのか、お前は」

若い頃は、男を「条件」で選ぶ女性が大嫌いで、よく腹立たしく思っていた。 「医者としか結婚したくない」とか、「電通マンとコンパしたい」とか(マンとコが近過ぎてドキッとするね)、ふざけんなと。あなたの周りにもいる(いた)でしょう、そういうヤツが…

「アイ・ワズ・ア・カウボーイ」

この、理由のなき自然への憧憬はなんなのだろう、と時折思う。 僕は山とか草原とか湖を見るのがやたらと好きなのだ。だから、トレッキングしたり、モーターサイクルという鉄馬に乗ったりするのだ。加えて、僕が十代の頃より飽きもせずに聴き続けているカント…

「インディーズの矜持とロックの魂」

僕は自慢ではないが友達が少ない。同級生の仲間は東京にいるが、十年以上も住んでいる関西には本当に数えられるくらいだ。何百人もいる会社の中に、神市(仮名)という後輩が一人。あとは仕事関係の友人と一部重なりながら、トレッキング系で幾人か。そして…

「どうせオレは忘れちまうんだ(アスホール篇)」

朝九時四十二分バンクーバー着予定だった列車は、八時五〇分頃に駅に入った。こんなにアバウトなら「四十二分」とか予告しなければいいのに。 午後に小型飛行機でバンクーバー島のビクトリアという街へ向かうが、それまでの時間潰しにダウンタウンまで重い荷…

「どうせオレは忘れちまうんだ(テント篇)」

マウントロブソンが目の前に見えてきた。それでも目的地のキャンプ場まではまだ三キロほどある。つまりあと一時間ほどは歩かなくてはいけない。 辿り着かないのではないかという不安はもうないが、力の限界が近いこともわかっている。トレイルは河原まで下り…