月刊ショータ

元電通コピーライター。ずっと自称コラムニスト。著書『広告業界という無法地帯へ ダイジョーブか、みんな?』、『カウボーイ・サマー 8000エイカーの仕事場で』

「ワタシは差別をしない」という人間こそ、私は軽蔑する

今季からドジャースに移籍した大谷翔平選手はスーパースターである。ここに疑問の余地はない。彼がどれだけスゴイ野球選手なのか、いまさら説明する必要もないだろう。 シーズン開幕前のいま、日本では、彼のキャンプでの姿やコメントのひとつひとつが報じら…

「メディア関係者に”書く力”を」

はじめまして。前田将多と申します。 最近はなぜかまとまった文章を書くことができなくて、書いては消して、書いては没にしての繰り返しなのだが、ここへきてまた困った本を読んでしまった。 直塚大成・田中泰延共著『「書く力」の教室』(SBクリエイティブ…

「たくさん聴いたなぁ、トビー・キース」

最近は亡くなったひとのことばかり書いているようで気が滅入るが、それでも書いておこう。Toby Keithというカントリー歌手が2024年2月5日(アメリカ時間)に胃がんとのたたいかいを終えてこの世を去った。 www.tobykeith.com 日本では知っているひとはあまり…

「おかんの白子のり」

私の母親はいくつか病気をしたあとに認知症が進んでひとりで暮らすことがままならなくなり、この春以来グループホームに入っている。 認知症というのは(人にもよるのだろうが)ゆっくり進んでいくようで、はじめは私たち家族にもわからなかった。ここ何年も…

「追悼 チバユウスケさん」

チバユウスケ氏が亡くなって、かなしい。 2023年はロクなことがなかった一年だが、年末にこれか、とガックリ膝から崩れ落ちるような喪失感だ。訃報から十数日が経つが、しばしばチバユウスケのことを考えてしまう。 私はただの一ファンで、もちろん個人的な…

「海軍の町・呉にて、オレは猛省した」

僕は仲間たちと「JR環状線一周飲み会」というのをここ何年もつづけている。一周19駅ある大阪の環状線を毎月ひと駅飲み歩くという遊びだ。 ルールは「ネット検索をせずに、足と勘で店を探す」、「チェーン店には入らず、地元のひとが来るような小さな店を選ぶ…

「夢への往来(佐渡旅 後篇)」

新潟県の直江津港から、佐渡島の小木港までは、フェリーで2時間40分かかる。 私はフェリーでの旅は過去にもしていて、大阪港から大分県の別府までは何度も乗っているし、愛媛県の八幡浜から大分県の臼杵までや、福岡県の新門司港から大阪港までなど、船旅は…

「18才のオレがいた(佐渡旅 前篇)」

私はこれまで読んだ本に導かれて旅をしてきた。 はじめてのひとり旅は、東京で生まれ育った少年が、日本海を見ようと富山県の朝日町を訪ねた。そこは映画『少年時代』(篠田正浩監督/1990年公開)のロケ地になっていて、十八才の私は目の前が海岸の民宿に泊…

アメリカンなミュージック

浅生鴨さんが主宰するネコノスから『異人と同人4 推し本』という同人誌が出まして、これは60人の参加者各人が「自分の”推し”を書き綴る」ものである。 私はかねてより「カントリーミュージックの普及」をライフワークとしているので、当然カントリーについ…

「20年書いた」

実は、この「月刊ショータ」は20周年なのである。書いている本人が、2023年も三分の一が過ぎてから気がついた。 2003年の1月に書きはじめたようだ。今回は20周年特別号として、この20年を振り返ってみよう。これは自分のために振り返るだけなので、読んだひ…

「存在を抱きしめたか」

2022年のFIFAワールドカップを観ていて「これまでとなにかちがう」と感じたのは、世界中の美女たちをカメラが抜く映像や報道がなかったことだ。ルッキズムとの批判を恐れたのだろう。正直に言うと、私はちょっと残念であった。美女がだめなら、美男も、マッ…

僕たちのフィルダースチョイス(小説)

今月はこちらでもどうぞ。一日二日はたのしめるかと思います。 〈高校の野球部から20年の付き合いである田辺(ジュン)、宇賀神(マガジン)、権藤(ゴンドーフ)、藤原(クゲ)という男たち四人は、中年になりそれぞれ仕事と家庭を持ち、各々の悩みを抱いて…

『スローシャッター』を書かれた田所敦嗣さんについて

今月の月刊ショータは、今般『スローシャッター』が刊行されました田所敦嗣さんについて、版元であるひろのぶと株式会社のnoteに寄稿しましたので、そちらをお読みくださいませ。 Thanks. note.com

「虫のように必死に、人間のように恋を」

ひろのぶと株式会社から初の書籍である、稲田万里著『全部を賭けない恋がはじまれば』が刊行された。 この新興出版社は、「初版印税20%」、「累進印税™」を旗印にして、田中泰延さんが立ち上げた会社である。日本では通常、本の作家への印税というのは10%に…

「このヤバい世界を、よりクリアに……」(今月の3冊)

私は行きの電車では新聞を読み、帰りの電車では本を読むという昭和のような通勤スタイルをして十数年になる。読みたいものの中ならテキトーに選んだのに、3冊がなぜかリンクするようでおもしろかった本を紹介させてもらいます。 林智裕著『「正しさ」の商人 …

「憤懣をカッコよく晴らすには」

去る八月九日に、ひろのぶと株式会社の田中泰延さんとアートディレクターの上田豪さんと、ワタクシ前田将多と、今回で第10回を迎えるトーク配信を行ないました。 『僕たちは明日以降で本気出す』 youtu.be この番組はみなさんからご質問やご相談を募りまして…

「ボンクラなりに、宗教を考える」

僕が十代のころは、結婚式は「チカイマスカ?」という神父の前でやって、正月は神社で柏手を打って、葬式はお坊さんのお経を聞く、日本人のええ加減さが嫌いであった。特に、クリスマスになぜか、あわよくばセックスをしようとする連中は大嫌いなのだった。 …

「善良で、愛すべきバカのひとたち」

僕が通っている床屋さんは住宅地の路地裏にあり、まず地元のひとしか来ない。以前は心斎橋のヘアサロンに行っていたのだが、会社を辞めたときにわざわざ電車に乗ってミナミまで出ていくのが億劫になり、近所を歩き回って探したところなのだ。 おしゃれすぎず…

「上越市高田にスピンオフ」

環状の電車といえば、東京の山手線がもっとも有名だが、大阪にもJR大阪環状線がある。友人の関さんと吉岡さんが「大人になってから友達ってできるのか」という、ふとした会話から、「じゃあ、毎月ひと駅飲み歩きましょう」とはじめた遊びが「環状線一周飲み…

「おかんがオレオレ詐欺に引っかかりました…」

うちのおかんがいわゆる「オレオレ詐欺」に引っかかった。50万円やられたそうだ。 手口は、掻い摘んで書くと以下のようになる。僕の兄になりすました人物から電話があり、「会社の重要書類やケータイが入ったカバンを失くした。だから、いま公衆電話からかけ…

「約束を交わしてはいけない国」

新型ウィルスによる長い長い災禍にもようやく光明が見えはじめたかと思った2022年2月末、ロシアがウクライナに侵攻した。 ニュース解説にある通り、これは「ブダペスト覚書」を踏みにじる行為である。ブダペスト覚書というのは、1994年12月5日にハンガリーの…

「きみの中の、なにかを進めるのが旅なのではないか」

もう2年半近くも海外に行っていないことになる。まぁ、そんなに長い時間でもないけど、どうもこの2022年もムリなんじゃないか、つぎはいつになるんだろうと考えると心が重たくなる。特に近年は、2017年(カナダ→サンフランシスコ)、2018年(ミラノとテキサ…

「アメリカの叫び」

カントリーのラジオから叫びのような歌が聴こえてくる。 鉄をグラインダーで削ったときに飛び散る火花のような歌声と、胸ぐらを掴んでくるようなメッセージが、うつくしい旋律に乗せられている。 「なんだこの歌は」と驚いて調べてみると、Aaron Lewisという…

「毛のことに、いちいちうるさい国」

大阪の高校で、「髪を黒く染めろ」と強要されてモメた末、不登校になった女子生徒が慰謝料など損害賠償を求めた二審判決がニュースになった。 一審の報道: www.nikkei.com 二審: www.sankei.com 判決は、一審と同じく、「学校側の指導に違法性はない」とし…

「古いものは、腐ってない限りよいのではないか」

ダイバーシティだとかサステナビリティ―だとかSDGsだとかポリティカリーコレクトネスだとか、ホント―にうるさい世の中になったものだが、いつの世も敬意を払われモテるのは、男らしい人、女らしい人であるというのは強烈な皮肉である。 ……てなことを、ア…

「世界はなにをそんなにサステインしたいのか」

いま、世界中を覆い尽くす大問題は「偽善」なのではないかと思う。 もちろん、ウィルスは喫緊の問題なんだけど、ワクチンのおかげで克服の道筋がついた。そのうち治療薬も出てくることだろう。 アディダスが名品スタンスミスにレザーを使うことをやめて、合…

「恋のドアは、開けておけ」

ラジオで悩み相談の番組を聴いていたら、こんな質問だった。 「私は恋愛に興味がなくて、彼氏もほしくありません。親や友人など、まわりの声も鬱陶しいし、本当に価値観を押しつけてほしくないです。こんな生き方は許されないのでしょうか」 それに対して、…

「7回の夏の昔、なにをしていただろう」

久しぶりに音楽アルバムを買った。買ったと言っても、モノとしてのCDではなくてダウンロードなんだけど、以来ずっと聴いている。 モーガン・ウォレンという若いカントリー歌手で、僕はまず彼の”Whiskey Glasses”という曲で注目していて、不適な面構えも、ガ…

「BLMとはなんだったのか」

誰も書きたくないことを書くこのコラムだが、ここのところずっと考えていて、答えが出せないままのことがある。 ひとりで夜道を歩いていたら、向こうから黒人の男性が三人やってくる、としよう。僕は心のどこかで「怖いな」と思ってしまう。これは差別なのか…

「コロナ禍を、人間として生きること」

コロナにはじまり、コロナに終わった一年であった。 皆さん、おつかれさまでした。……なんだけど、まだ終わっていないどころか、日本の感染者数は過去最多の4515人で2020年を締めくくるという、苦い苦い年の瀬となった。 僕個人の感慨としては、ウイルスそれ…